自立支援医療のはなし
こんにちは。サイトウです。
今日は、精神科通院費の助成制度についてお話しします。
こころの病は、すぐに治るものもあれば、治療が長く続く場合、また完治ではなく「寛かい」(良い状態を維持できていること)と呼ばれるものまで予後は様々です。
特に治療が長く続く場合や、寛かい状態を維持するために薬を飲み続ける場合には、安くない医療費(診察料+お薬代)を払わなければなりません。
そんな人のために、国は助成制度を設けています。それが、自立支援医療とよばれるものです。この制度を利用すると、自身で支払う額(自己負担額)が原則1割負担になります。
自立支援医療は以下の3つがありますが、今回は精神通院医療についてお話ししたいと思います。
対象
精神通院医療の対象者として規定されている「精神保健福祉法第5条に規定する」者とは、以下の人たちです。
「この法律で「精神障害者」とは、統合失調症、精神作用物質による急性中毒又はその依存症、知的障害その他の精神疾患を有する者をいう。」(精神保健及び精神障害者福祉に関する法律 第5条第1項(定義))
この定義だけ見ると、統合失調症や依存症、知的障がいのある人しか利用できないのかと思ってしまうかもしれません。
しかし「その他の精神疾患を有する者」とあるように、適用範囲は幅広いです。診断名が付いていないという方も、定期的に受診されている場合は主治医に相談してみてよいと思います。
自立支援医療は診察料、お薬代のほか、デイケア(治療的な環境で生活リズムを整えたり、生活の支援を行う場所)、訪問看護でも利用することができます。ただし、登録している病院や薬局のみでしか利用できないため、引っ越したり転院した場合には変更の手続きが必要になります。
また、まれに自立支援医療が使えないメンタルクリニックもあるので、主治医に使えるかどうか質問することをおすすめします。
申請方法
申請は区役所にて行いますが、手ぶらで行くことはできません。まず主治医に、自立支援医療専用の診断書を書いてもらう必要があります。
ここには病名を記載する欄もあるので、病名を告げられていない(まだ明らかになっていない方)も主治医がどういった病気と捉えているか知ることができます。
書類を作ってもらう際は基本的に別料金がかかります(保険適用外)。3000~5000円ほどと病院によってばらつきはあります。10000円以上取るような病院であれば病院自体を変えることをおすすめします・・・。
診断書がもらえたら、マイナンバーカード(なければ保険証)を持って区役所へ行きましょう。担当課で自立支援医療費支給認定申請書を記入します。事前に用紙だけもらい(もしくはダウンロードして)記入することもできますが、窓口で記載した方が教えてもらいながら間違いなく書けるので、事前用意はしなくてもいいのかなと思います。
またこの際、診断書は原本ごと提出することになるので、事前にコピーを取っておくことをおすすめします。
札幌市の場合は以下のURLに診断書と自立支援医療支給申請書の書式があるので、参考までにご覧ください。
https://www3.city.sapporo.jp/download/shinsei/search/procedure_view.asp?ProcID=2122
申請後
申請すると、だいたい1カ月半から2カ月後に受給者証(水色の紙)が自宅に送られてきます。自治体にもよりますが、けっこう時間がかかります。もし届く前に受診する必要がある場合は、基本的には今までの負担額での受診となりますが、受給者証取得後、払い戻しをしてもらえることがあるので領収書を忘れずに保管しておいてください。また、病院によっては申請中であることを伝えるとその時から1割にしてくれるところもあるようです。
受給者証が届いたら、利用する際は必ず持参します。病院や薬局で記載する欄があり、それを書いてもらう必要があるためです。なので、お薬手帳と一緒に入れておいたり、保険証と一緒にしておくとよいと思います。
受給者証の有効期間は1年です。終了の3カ月前から更新の手続きができます。2年に1度、診断書の再提出が必要になるので2年に1回はお金がかかります。
おわりに
実際に1割負担となれば、一回の診察料が安くて400円程度になることもあります。さらに後発医薬品(ジェネリック)の薬にすることで、お薬代も低額で済むためお財布に優しいです。
自立支援医療は、国が定めた出費軽減のための助成制度です。所得保障(例えば生活保護や障がい年金等)とは違い、負い目やスティグマを感じづらく、幅広い方が使えるものになります。
青木(2022)は「知ることは生きること」※1 と述べています。こうした制度を知り、広めていくことで、生きづらさの解消に繋がればと思います。
最後までお読みいただきありがとうございました。
-引用-
青木聖久(2022)「経済的支援を受けたいとき-精神障害がある人の所得保障と出費の軽減へのアプローチ-」『精神科治療学』37(12);1305-1310.