声に出して読めば、もっと彼の気持ちがわかる
ほんの感想です。No.06 太宰 治作「走れメロス」 昭和15年(1940年)発表
お久しぶりの「走れメロス」
「走れメロス」を読むのは、小学生以来のこと。再読で、まず感じたことは、メロスに対する「一生懸命だけれど、抜けてるなー」ということ。そして、故郷を離れる際のメロスの苦悩にも、「自分が蒔いた種による苦難だよね」という見方をしてしまいます。
ところが、終盤、沈む夕日に向かってメロスが叫ぶあたりから、とにかく彼を応援したくなりました。
なぜ、「ダメ男メロス」に心が揺さぶられたのか。その理由を知りたいと思い、「走れメロス」を音読してみました。私の経験なのですが、音読により、「読むことに集中する」とともに、「言葉を音で聞くことで心が反応しやすくなる」気がするからです。
音読による気づき
その結果、メロスの人となりとは関係なく、「一度力尽きて諦めたメロスが、復活して、あることをやり遂げた」という点に、感動のツボがあると思われてきました。以下に、音読による気づきを記します。
音読に当たり、「走れメロス」を次の4つのパートに分けました。
「走れメロス」でのメロスの行動は、4つのパートで示すことができます。
パート1 街の噂に基づき、王の暗殺を試み、失敗して捕まる。王とある約束をして故郷へ帰る。
パート2 故郷で妹の結婚式を開き、それが概ね終わると、王の元へと出発する。
パート3 途中、大雨で増水した川を超え、山賊の囲いを潜り抜けた後、力尽きて意識を失う。
パート4 目覚めた後、あることを悟り、再び、王のところを目指す。
パート1及び2は、事柄をたどるという感じで、読みも平坦なものでした。声が心のざわつきに反応してきたのは、パート3の終盤からパート4の冒頭です。力尽き、王との約束を守ることを諦めたメロスが、復活して再び挑戦する姿が描かれていました。
故郷を去り、王の元へ向かう途上は、ほとんどメロスの視点でしか語られていません。いつのまにか、ダメ男と思っていた「メロス」の心情に同調し、次の言葉を、我がことのように叫んでいました。
信じられているから走るのだ。間に合う、間に合わぬは問題でないのだ。人の命も問題でないのだ。私は、なんだかもっと恐ろしく大きいもののために走っているのだ。ついて来い!フィロストラトス。
音読おすすめパート
「走れメロス」は、声に出して読めば、メロスの一生懸命さを、より感じることができます。よろしかったら、音読をしてみてください。全体の音読には、四十分弱かかりますが、パート4だけならば約十分です。
このパートは、他のパートと比べて、言葉を発していて気持ちがいい。比較的に短い文章の中に、メロスの「自分は死んでもいいから約束を守らせてくれ」、という真摯な願いが込められているためと思います。
メロス。君に対して、「自分が蒔いた種による苦難だよね」なんて思っていて、ごめん。
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