機内で歌うことが許されたおおらかな時代(674文字)
ずっとずっと昔、まだ子どもだった頃の話。
従兄弟や兄弟、おそらく年齢は3歳〜10歳くらいの子ども4名を含むグループで飛行機に乗ったことがあった。
10時間ほどのフライトで退屈しているとCAさん、当時はまだスチュワーデスさんと呼んでいたけれど、若くて綺麗な人が来て話しかけてくれた。
「今、みんなの間ではどんな歌が流行っているの?」
そう訊かれて、満場一致で即答した。
「山口さんちのツトムくん!」
そんな歌があるの?と言わんばかりの表情を見せながら、
「どんな歌?歌ってみて」
と言った。
長時間フライトの機内、もちろんエコノミー席。
みんなお疲れだろうし、寝ている人もいるかもしれない。
言われるがままに声を合わせて歌ったけれど、今思えばとんでもないことをした。
今だったら即座にクレームもの。
しかし、CAさんからのリクエスト。
歌う子どもたちに対して親は何も言わない。
他の乗客からもなんのお咎めもなかった。
今とは時代が違うから…
一言で言えばそうなのだと思う。
それぞれが抱えるストレスが少なかったから、うるさいことに対して腹を立てなかったのか、
大人たちの子どもに対する理解が深かったのか、
何にしても世の中全体がおおらかだったんだろうと思う。
些細なことに腹が立たない。
腹を立てなければ、我慢の必要もないし、
クレームによる摩擦も起きない。
相乗効果でストレス軽減。
YouTubeでストレス発散方法のレクチャーを見る必要がないわけだ。
因みに、改めて調べてみたら『山口さんちのツトムくん』はNHKの「みんなの歌」だったらしい。
もう遠すぎる記憶ではあるが、メロディは今でも覚えている。