人間ウォッチング(707文字)
金曜日、業務を終えてオフィスを出る。地下鉄に乗って数駅先で降り、別の電車に乗り換える。
1週間の疲れを感じつつも、明日から2日間、お休みだと思うと気持ちは前向き。いつもよりもちょっとだけ、顔を上げて歩く。
駅の乗り換え通路では、それぞれの人が自分の行きたい方向に足早に歩いている。右側通行とか左側通行とか、そういう秩序はどこにもない。それでも不思議なくらいにお互いがぶつからないように上手に交わしながら進んでいく。
改めて眺めると、本当に色々な人がいる。
スーツを着てリュックを両肩にかけて胸に抱えるように持っている人が多い。きっとパソコンを持ち帰るんだろうと想像する。Tシャツにジーンズというカジュアルなスタイルの女の子もいれば、ギターを担いだ男の子、ふわふわのワンピースでコツコツとヒールを鳴らして足早に歩く女性、カールした長い髪のエキゾチックな外国人も。
これからグラスを片手に金曜の夜を楽しもうという人もいれば、お腹を空かせて家路を急ぐ人もいるだろうし、皆それぞれの人生を生きているんだなぁと、妙に客観的な視線で見回したりしながら次の電車に乗った。
自宅の最寄り駅に電車が停車して、ゾロゾロと車内から流れ出る人波に紛れてホームに出た。ここでも色んな人を見る。
吾先にと急ぐ人。立ち止まって道を譲る人。赤ちゃんを乗せたベビーカーを押しながら立ち往生している人。
観察しながら、果たして自分はどれだけ心に余裕を持てているだろうかと思ったーーーファッションを楽しむ。生活を楽しむ。「お先にどうぞ」という気持ちを大切に出来ているか。
駅から出ると西の空に雲が静かに浮かんでいた。
人生、楽しまなきゃ損だよね。皆で幸せになれたらいいね。