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街角のバイオリン弾き(526文字)

イタリアのとある街角で老紳士がをバイオリンを弾いていた。広くはないがガヤガヤと賑やかな通りで、注目する人も殆どいない中、しっとりと哀愁を帯びた旋律を響かせていた。

聴き覚えのあるメロディーだったけれど、馴染みの曲ではない。でも、何の曲か気になる。また聴きたい。そのためには曲名を知りたいけど、一緒に旅行していた友人も聴いたことのあるメロディーではあっても曲名は知らないと言う。それに、興味なさげ。

仕方ないので曲名調べは日本に帰ってから。だからそれまでメロディーを口ずさめるように覚えておく必要がある。何度も何度も口の中で、小さな声で繰り返し歌った。

「ねぇ、もうその曲歌うのやめて」
友人にそう言われるまで歌い続けた結果、帰国後もメロディーを忘れることなく、音楽好きの父に曲名を教えてもらうことができた。

『シェルブールの雨傘』という古い映画の曲だった。映画も見た。音楽と同じように、切ない映画だった。
そして、この時、音楽が情景描写を引き立てる大きな力を持っていることを実感した。

映画音楽っていい。最近のアーティストの楽曲然り、久石譲やジョン・ウィリアムズ然り、クラシック音楽然り。映画にピッタリ波長の合う音楽は、そのストーリーのワンシーンを頭に中に蘇らせる。


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