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にっぽんの知恵「おけいこ②好きな道をみつけて、人生を豊かに」
図像:Suzuki Method(enWikipediaより)
「おけいこ」をめぐる共同討議の冒頭、鈴木さんが、おじさんにあたる鎮一さんの思いを代弁してくれました。
「子供は、特別な苦労なしに日本語を身につけますね。幼児が母国語を覚えるときは、文字ではなく、親が繰り返し、いろんな言葉を聞かせるわけです。それなら、子供のころから、何度も美しい音楽を聴かせ、同じ曲を繰り返し練習する環境を整えれば、うまくいくのではないか。そんなふうに、おじは考えたのです」
そこに熊倉さんが言葉を添えました。
「なるほど、日本の伝統的な芸能である小唄、清元、常磐津なども、師匠がする通りに耳で覚えていきます。なかには、数百曲から千曲もの歌を覚え、三味線で弾ける師匠がいます。子供のころからけいこを繰り返すことで、曲が体の中に入ってしまうのですね」
こう言ったあと、茶道のほかにも華道や書道など、日本の伝統文化に詳しい熊倉さんは「手習い・目習い・指習い」という言葉を教えてくれました。
「書道で、筆をとって文字を書くのが手習い。優れた書を見て学ぶのは目習い。指でお手本をなぞって学ぶのを指習いといいます。優れた芸術、お手本に触れることが大事なわけです」
そういえば、江藤俊哉さん、諏訪根自子さん、黒沼ユリ子さん、竹澤恭子さんなど、スズキ・メソードで手ほどきを受け、世界に羽ばたいていったバイオリニストは少なくありません。
しかし、選ばれた演奏家を輩出することだけが、スズキ・メソードの目的ではないのです。
「おじは本来、プロを育てるためではなくて、集中力や反射神経、美しいものが分かる心など、人間として生きていく力を育てるためにバイオリンを教えました」
こんな鈴木さんの話を受けて、熊倉さんは、世阿弥が能楽書『花鏡』に記した「修行が成就するための三つの条件」を紹介しました。
第一は「その修行にふさわしい『素質・能力』がある」、第二は「その道に一心不乱に精進できる『好きの心』を持っている」、そして第三は「その道に精通した『良い先生』に恵まれる」ことなのだというのです。
「なかでも大切なのは『好きだ』ということでしょう。好きな道、楽しめる道を見つけて人生を豊かにする。それが、おけいこごとだと思います」
そう熊倉さんは付け加えるのを忘れませんでした。
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