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「トランプ信者」潜入一年 ~私の目の前で民主主義が死んだ を読んで トランプの手法を見てみる

前回は横田増生氏の著作について書評をあげてみました。


著者の横田氏ですが、色々なところに潜入を敢行し著書を仕上げています。
どの書籍を読んでも感心すること至極ですが、最新刊はなんとアメリカに飛んで、2020年の大統領選挙を睨みトランプ信者について見てみたようです。
コロナ禍の中、ここまでやってしまう横田氏。
今度はどんな潜入になっているかを見てみましょう。

また、例によって私の読書ノートをベースにしておりますので、凡例を示しておきます。

・;キーワード
→;全文から導き出されること
※;引用
☆;小理屈野郎自身が考えたこと

まずは書籍のメタ情報を。

書名 「トランプ信者」潜入一年 ~私の目の前で民主主義が死んだ
読書開始日 2022/03/03 16:52
読了日 2022/03/06 16:13

概略

ユニクロやAmazonの社員として潜入してノンフィクションを書くルポライターの最新版。
朝日新聞の下段の書籍広告を見てピーンときて購入。
アメリカの民主主義の状態について少し学んでみようと思う。

読了後の考察

いままで何冊か、トランプ政権についての著作と、トランプ自身について、そしてアメリカの社会とトランプの関わりについての著作を読んでみたがなかなか全体像が見えなかった。
今回の著作でかなりはっきりとトランプとアメリカ社会、その全貌が見えたような気がする。
いままでの著作はアメリカの現在の状況を肌感で分かっている人に向けて、という感じの著作だったのかなあと考えた。
著者は、Amazonやヤマト運輸などに1年間潜入することによって内部の状況をあぶり出しているのであるが、その彼が大統領選挙の1年間アメリカに滞在することによって、内部の全貌を明らかにした。
英語での取材もお手の物。
このようなフリーランスのライターがと言うことにも驚きを感じた。
彼の後書きを見ていると、24年の大統領選挙でもトランプが復活する可能性はゼロではない、とのこと。
一番基本的なことだが個人個人がしっかりと政治や社会に関心を持ち、選挙があれば必ず投票し自分の意思を表明することが大切だと言うことを改めて感じた。

☆昨今のウクライナ関連の問題、これは主役がプーチン大統領だが、やり方としてはトランプのやり方と似てはいないか?と感じた。
報道統制、フェイクニュースということばを使うこと、等など。
アメリカのトランプ大統領が選挙で選ばれたときの手法にはロシアもかんでいたはず。ここである程度経験を積んで、プーチン大統領な自分の政治に活かしているのかも知れない。

本の対象読者は?

トランプ政権とは何だったのかについて考えたい人
アメリカの社会について学んでみたい人

著者の考えはどのようなものか?

※トランプとは、これまでの4年間、文壇と混沌が作り出した対立軸という細いロープの上を歩く曲芸師のように、絶妙なバランスをとりながら政権運営をしてきた希有な大統領

→☆確かにそういう捉え方もできるだろう。

※トランプとその政治手法を考える上で、嘘と切り離して話を進めることはできない。(中略)トランプの嘘は次元が違う。その回数と頻度、また、自分の再選に有利と考えれば、たとえ、嘘であることが指摘されても、何度でも同じを繰り返すという性向において、ほかの政治家とは事件を異にする。

→☆すごいな。普通主義主張があったらできないこと。彼の主義主張は自分が都合よく世の中を渡っていくこと。それならば上記は納得できる。

※トランプには文書を読む忍耐力がないとされ、トランプが大統領日報を読むことはほとんどなかった(中略)トランプは一日の大半を、<重役時間>と称して、テレビを見たり、Twitterに投稿したり、手当たり次第に政界の友人や知人などに電話をかけて話をふけるのに使っていた。(中略)そうした<重役時間は>午前8時から午後5時までの6割以上になった

※「宣伝の最後の仕上げははったりである。人々の夢をかき立てるのだ。人は自分で大きく考えないかも知れないが、大きく考える人を見ると興奮する。だからある程度の誇張は望ましい。これ以上大きく、豪華で、素晴らしいものはない、と人々は思いたいのだ。私はこれを真実の誇張と呼ぶ。これは罪のないほらであり、極めて効果的な宣伝方法
※真実の誇張ということばはその後のトランプを理解する上でのキーワード
※事実かどうかは重要ではなく、自分がよく見られるのなら多少の嘘は許される。嘘も繰り返し言えば、人々はそれを信じるようになる。

→☆これがトランプの通奏低音になる発想だろう。
ここまでうまくいくとは本人も思っていなかったかも知れないが、この発想があるからすべてが成り立つのかも知れない。

※トランプは99年共和党から改革等に鞍替えした後で、民主党と共和党の間を行き来し、15年に共和党から大統領選に出馬するまで、所属政党の変更階数は少なくとも5回に及んでいた。

→☆主義主張が大きく変わる政治家は要注意と言うこと。高市早苗氏とか、国民新党の玉木氏などは要注意と言うことだろう。

※トランプにとって一番大事なことは大統領になることであり、政策を含めたそれ以外のことは二の次、三の次なのだ。ただ大統領になりたい、という点で初志貫徹していた。

※ネット上の嘘を拾い上げ、あたかも事実であるかのように話した。その後、アメリカ政界で事実と虚構や、真実等その間の境界線が消え去り、それが蔓延するようになったが、その出発点はペイリンが副大統領候補になったときに遡ることができる。

→☆この頃から政治がおかしくなった、という風にも考えることができるだろう。

・トランプの顧問弁護士、ジュリアーニ元NYC市長について


※ジュリアーニと言えば、日本では9.11同時多発テロの後に、ニューヨーク市を立て直した「世界の思潮」(タイム誌)として記憶している人も少なくないかも知れない。引かし、その後は、市長時代の名声を頼りに、巨額の弁護士費用を払える怪しげな国内外の依頼者からの弁護を引き受けるようになる。(中略)金になるのなら汚い仕事も平気でやる弁護士に成り下がっていた。その際足るものが、トランプの顧問弁護士だった。

→☆情けない。しかしそこまでのレベルの人でもお金で動けばこのように落ちぶれてしまう、ということの見本でもあると思う。

・トランプ支持者がデマを信じるメカニズム

※まずは右派系のメディアがデマを数本の記事にして流した。トランプ自身やホワイトハウスの報道官がその内容をリツイートする。それを受け、共和党善行区委員会の委員長が記者会見を開く。こうしてトランプの勝利を信じたい人たちの目にはソフトウェアのデマが正当性のあるニュースであるかのように映った。

→投票をカウントするソフトの陰謀説についてまとめたものだが、これがデマをいかにも陰謀として仕上げるメカニズムとしてまとまっている記述だ。

※トランプの大きな特徴は、自分が任命した人物は、すべからくトランプに最大限の忠誠を尽くすべきだ、と信じて疑わないこと。

→☆独裁者の考え方と一緒。結局トランプ政権の4年間は独裁政治に落ち込んでいた、とも考えられると思う。

・アメリカで陰謀論が発生しやすい原因

※この国の原型がキリスト教の信教の自由のためにつくられたことが深く関係している。
※キリスト教では、この世界の背後には神という目には見えない支配者がいて、自らの意思で宇宙全体を導き、計画を実行しているというのが、その基本的な考え方。現実世界で見えている点と点を結ぶと、いつの間にか大きな絵が浮かび上がってくる。これは陰謀論と同じ構図
※アメリカは近代の合理主義と啓蒙主義から生まれた国なので、物事はすべて合理的に進むという歴史的認識がある。だから、少しでも不合理なことや、意図せざるもの我とが起き始めると、何科がおかしいのではないか、誰かがよからぬことを企んでいるのではないか、という理論が自然に発生する。

→☆これが陰謀論が発生するメカニズムだろう。非常に短くうまくまとめていると思う。
この前提が分からないとなぜ陰謀論が、という話になり理解を妨げてしまう。

※トランプの再選を阻んだものは、アメリカで120年ぶりとなる66%と言う高投票率

→☆大体ややこしい政治をする人は投票率が低いときに出てくるのかも知れない
投票率が高い、ということは浮動層も政治に巻き込めていると言うこと。ただし浮動層だけに、逆にうまくいかない場合もあるかも知れないので要注意でもあるが。

・※以下の4つの特徴がある政治家は要注意

1.民主主義のルールを否定・軽視する
2.政治的な対立相手の正当性を否定する
3.暴力を許容・促進する
4.メディアを含む対立相手の市民的な自由を率先して奪おうとする

→☆政治家を見極めるリトマス紙としてはこの4つは非常に役立つと思う。
これから日本の政治家の基礎体力を見つめ直すときにも利用してみたいと思う。

・※2020年アメリカ大統領選挙は、11月の選挙日の後から連邦議事堂襲撃事件までの2ヶ月間に、その本質と深層が凝縮されていた。

→☆最後まで通読してみるとこの発想が間違っていなかったと断言できる。
最後の断末魔のような状態だったがそんなときこそ事の本質が表に現れてくるのではないか、と思った。

その考えにどのような印象を持ったか?

ただの駄々っ子が大きくなった、という感じだ。
途中で成功と失敗を繰り返すトランプ氏。
なぜここまで肥大してしまったのかについて一定の答えをこの著作は出していると思う。
トランプ氏自身だけではなく投票者を含む周りの人々反応もお互いに大きな影響を与えることを認識しておくべきだと考えた。
こういう人もいる、というのが世の中の多様性という考えもできるが影響が大きすぎるような気がする。

印象に残ったフレーズやセンテンスは何か?

※トランプがフェイクニュースであるのか否かを判断する基準は、ニュースがねつ造であるかどうかではない。ニュースが、自分に好意的であるか否か。

※アメリカでは毎年約50万人が高額な医療費を支払えずに破産している

→☆すごいな…日本の人口に換算すると12~14万人ぐらいの人が医療費で毎年は算している、というところだろう。

※トランプが何より恐れたのは、新型コロナのせいで、自分の再選が危機に直面すること

※アメリカは<9,11同時多発テロ事件>で3000人近い死者を出した。朝鮮戦争での死者は36000人を超えた。ベトナム戦争での死者は58000人を超えた。この辞典ですでに、3つの浅層などによる死者数を合計した数字より、新型コロナの死者数が上待っている。(40万人以上が新型コロナで命を落としていることに関して。第2次世界大戦の死者数に並んでいるとのこと)

※トランプにとってTwitterのアカウントは最大の「政治資産」
※トランプにとって正しいニュースかフェイクニュースでアルンかを見極める基準は、自分の意に沿っているのか否か

→☆なるほど。この目線で見ればすべてが納得いく。

※(トランプの20年選挙が)不正選挙の主張は10種類前後のパターンがある。

※情報リテラシーの高いはずの職歴を持った人物でさえ、迷宮にはまり込んでしまうと、容易にその泥沼から脱出することができなくなる。→☆これではほぼ洗脳だ。確かに彼の手法はドンドン嘘の情報を流し何が真実か何が嘘かを分からなくするから、情報に翻弄されてしまうのが原因なのかも知れない。

※選挙から半年がたっても、共和党支持者の7割近くが、依然として大統領選挙で不正があったと信じている。実数にすると4700万人の成人が不正選挙を信じており、その一方で。バイデンを正当に選ばれた大統領とは認めていない。この数は有権者全体の3割以上を占める

→☆完全にアメリカ社会が分断されていると言うこと。やりきれない感じがする。

※いつまでも嘘を突き通すトランプに入れ込む日本人が一定数いる

→☆Jアノンといわれるらしいが、そんなバカな話はと思った。しかしはまる人は居るんだなあ。
新興宗教のようなものか。洗脳か?

※トランプは16年、選挙で得ラバ得れて大統領になった。入り口は民主的だった。しかし、トランプが大統領だった4年間を見ても分かるように、いったんこうした扇動政治家が政治の頂点まで上り詰めると、その暴君が民主主義を破壊するのを食い止める手段は限られている。

→☆これと似ているのがナチスがドイツの政権を取ってからのやり口。それに近いことが起こったと言うこと。

類書との違いはどこか

大統領選挙の仕組みや解釈について非常に平易に解説している点

関連する情報は何かあるか

民主党と共和党の関係
アメリカ社会の成り立ち(30年前自分がホームステイに言った頃とはだいぶと様相が違う)

まとめ

トランプ大統領について自分の頭の中で肌感として理解することができた。
そしてトランプという人間をどのように理解したらいいかと異端著も捉えられたと思う。
改めて横田氏の取材力、筆力の凄さを感じた1作でした。

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