ハイドンとの出会い
雷にうたれたような衝撃、というのはまさにこういうことを言うのか…
そう感じたのは、高校2年生の頃でした。
ショパンとラフマニノフが好き好き(^o^)
ピアノを習っていた中学2年生のころ、無事に中二病が発動しました。
ラフマニノフのピアノ協奏曲2番かっこいい!!(弾けないけど)
ショパンのピアノソナタ3番かっこいい!!(弾けないけど)
リストのラ・カンパネラかっこいい!!(弾けないけど)
ベートーヴェンの熱情かっこいい!!(弾けないけど)
飛び交う竜、剣と魔法を使う戦士たち、山脈を覆う暗黒の雲をこれらの曲から感じ取っていたのかもしれません。
そうそう、必ず主人公(物理攻撃系)と相棒(魔法使い)はイケメンであることが必須条件です。
なんの話だ。
とまあ、こんな感じで。
やっぱり男の子は、テンポが早い曲・オクターブが連続してる曲・連符が88鍵を駆け抜ける曲・色気むんむんな曲・斜に構えたような曲といった条件のうち、いくつかを満たすような曲に惹かれるわけです。褒め言葉です。
それが記事の冒頭に挙げた曲たちです。これらはすべてを満たします
すんばらしい
この頃、ショパンのワルツやポロネーズが弾けたらたぶん天下とれるんじゃないかと勝手に思ってました。理由なんてないです。
だから、弾けもしないポロネーズやアンダンテ・スピアナートに戦いを挑んでは、負傷兵になりながら過ごすという日々を送っていました。
高校の音楽室
高校にあがると、ピアノの弾ける友人を多くもつことになりました。
ある人はドビュッシーが好き、またある人は合唱曲の伴奏パートを弾くのが趣味、またある人は坂本龍一を弾くのが好き。また、吹奏楽部に所属していたので、様々な楽器と触れ合うことになります。
こんなにも世界が広がるとは。とても楽しい高校生活でした。
音楽室には、音楽準備室という名の先生の仕事場兼楽譜保管庫がありました。昼休みになると、友人たちと音楽準備室に押し入ってはアンサンブルやバンドスコアを漁って、バンドっぽいことをしたりアンサンブルを楽しんだりしていました。
ある日の昼休み。
友人たちより一足先に音楽準備室に忍び込んだ私は、一冊の楽譜を見つけます。
ソナタアルバム第1巻
なーんだ、古典派のソナタかぁ
なんか古典派のソナタって、子供っぽい曲調だよなぁ
熱情とか月光みたいにかっこいい曲はあるんかいなァ
そんな舐め腐った私を、ハイドン先生は見逃さなかったのです。
せっかく手にとったし、なんか1曲弾いてみるか。
そう思い、有名なハイドンのソナタ35番ハ長調の第1楽章を弾いてみるのです。提示部を弾き始めた私は、案の定「うーん…、やっぱり子供っぽい曲だなぁ…」と想うわけです。
しかし提示部も後半に…、そして展開部へ、再現部へ…
なんだこれ…、調が目まぐるしく変わっていく…
旋律が変化し、分解され、再構築され、また分解されていく…
一瞬立ち止まったかと思えば、突飛な調で曲が再開される。なんて鋭角なんだ!
きっちり計算しつくされている曲なのか?と思っていると、幼い子どもが駆け回るかのように突然遊びだす旋律たち…
ちょっと待って、このまま進むのはいいんだけど、脳みそが追いつかないよ!
なんだろう、この感覚。冒頭の雰囲気とは全然違う表情じゃないか!
大学ではハイドンづくし
ハイドンに出会った私は、大学にあがると、貯めたバイト代でハイドンのソナタ全集を買いました。ヘンレ版、高価だったなぁ…。
とにかく片っ端から弾きました。どの曲を弾いても面白い!曲の規模なんて関係ない!ひたすらハイドンのソナタに惚れ込みました。
大学の学期末にはピアノの実技試験があり、必ず課題曲と自由曲を弾きます。
課題曲にベートーヴェンのソナタを指定され、自由曲にハイドンのソナタを選ぶということもありました。課題曲:ワルトシュタイン、自由曲:ハイドンソナタ50番の時は脳みそが破裂しそうだった…あぁ楽しかったなぁ笑
弾くだけでなく、楽曲の研究も個人的に趣味で進めていました。ハイドンはこのソナタを通して何を伝えたいんだろうか、日々考えていました。
この楽曲研究は、大学の卒業論文にも活かされることになります。ハイドンの初期ソナタ群から何を学べるかをテーマにして書きました。本当に楽しかった。卒業論文を楽しいと思えた私は、おそらくとても幸せ者なんだろうな。
日々の癒やしと励まし
社会人になった今でも、もちろんピアノを弾きます。
学生の頃と比べたら、弾く時間はガクッと減りました。仕事が忙しい時もあり、疲れてしまい、週2日くらいしかピアノに触れないときもあります。
でもそんな時にこそハイドンのソナタを弾きます。初期の小さなソナタ群や過去に夢中になって弾いたソナタを。
弾いていると、心が安らぐだけでなく、明日も頑張ろうよという励ましを受けている気になる。理論を超えて、心に訴えかけてくるものがある。
いつもそばには、ハイドン先生。
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