以蔵さんの話ー3

さて、2では岡田以蔵が何故足軽ではないのか、まずは郷士という人々について長々説明してみました。郷士は身分、足軽も身分。郷士の方がずっと上。郷士は自分の領知経営を行いますが、足軽は藩の役所等で実務を担当。

では何故足軽なんて言葉が出てきたのか…?もう一つ考えられる原因が「御預郷士」というシステムです。

郷士は国土防衛戦力と考えられた事は1で書きました。このため常日頃から、武術の腕を磨いておく事が奨励されました。イザ戦争となった時、剣をふるえず槍もつけないようでは困ります。ちなみに鉄砲部隊は山内家中直属、先程書いた足軽さん達が戦時にはこれになりましたので、郷士に求められる武術は別のものです。多分馬術も入っていたのではないでしょうか。

しかしそれは、家中に組み込まれていない武力が在野に存在する事を意味します。またイザ海防!防衛!となった時に、隊としてまとまりが無い事では困ります。このため、郷士は家老や奉行など、士格の元に属する事が決められていました。正規軍ではありません。家老、馬廻、足軽は正規軍ですが郷士はあくまで控えの防衛部隊。この場合「○○(家)御預」として登録されたのです。

以蔵の家も、有名なものでは家老を勤めている桐間家、ここの御預郷士です。家老に属する場合は大組郷士と呼ばれました。馬廻等に属する場合は小組郷士。この他に御旗付郷士なんて部隊もあります。ひっくるめて大きくは御預郷士、と呼ばれます。部隊替えも行われまして、岡田家が桐間家所属で無かった時期もあるそうです。

御預郷士として士格に属していますが、その士格の家に仕えている訳ではありません。家老直属の家臣団は別にあり、この人達は「騎馬」「寄騎」と呼ばれています。家老の家の仕事に従事し、俸禄は家老から出ます。直雇用の人々ですね。郷士とは別の人々です。

話が逸れましたが、この「御預郷士」のシステムが、足軽と誤解される一因なのではと考えております。確かにこれだけ説明しないといけない「郷士」、創作にポッと出しても、読み手は「???」となってしまうでしょうし…馬廻や留守居組、半端な立場の白札より下、軽格に属する階級だから下級の武士、それなら足軽だろう…という事かもしれませんね。


まあそんな訳で、岡田以蔵は足軽ではありません。

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