切なさの記憶
切ない、という日本語がある。この単語を知ったのはいつの頃だろう。最近段々と秋めいてきたからなのか、外を歩いていてふいに郷愁的な気分に浸ることが多くなった。そんな時、頭に浮かぶのは"切ない"という感情なのだ。辞書的な意味では、悲しいときや恋しいときに胸が締め付けられる感情を指すらしい。たしかに、何かを恋しく想っている、という定義はあながち間違っていないのだが、何に対してのノスタルジーなのかが分からない。おぼろげな輪郭だけで、いつの残像なのかも思い出せず、だけど確実に切ないと思わせる記憶。今日も、そんな切なさの記憶を掘り起こせないかと淡い期待を持ちながら時を過ごしている。
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