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現実を見るか夢を見るか≪重度障害児子育て≫

子供に持病があると分かったとき、父親と母親、同じ方を向いて一緒に歩いていかなくてはならない。
しかし、実際、すぐにはそうもいかない。
子供の病気を受け入れるスピードも違えば、気になること・気にならない
ことが違ったりもする。
色々と決めなければいけないことがたくさんあるのだが、意見が違うので常に話し合いが必要だ。

例えば、主治医に予後を細かく聞くかどうか。
私は聞きたかった。
今の状態や治療について聞くのはもちろんだが、この先どうなるのか。
先を見据えなければ、息子にはどんな支援が必要なのか、どうすれば成長しやすい環境を作り出せるのか、色々なことが分からない。
例えば、「寝たきりなのか」「立てるのか」「歩けるのか」「座れるのか」「喋れるのか」「食べられるのか」など気になることがたくさんあった。
父親である夫は聞きたくなかった。
きっとマイナスなことを聞きたくなかったのだろう。
希望を持って育てていきたかったのだ。

これについては、最初の息子の主治医は「みんなそれぞれだから」と濁して私の問いには答えてくれなかった。
その次に担当となってくれた今の主治医は私の質問に真摯に答えてくれた。
その時は、私だけが知っておきたい(夫は聞きたくない)と説明して、私にだけ教えてもらった。



次にもめたのは「障害者手帳」を取得するかどうか。
私はなるべく早く取得しないといけないと思っていた。
なぜなら、車椅子(バギー)を作らないといけなかったからだ。
手帳をもたないと車椅子(バギー)を作るのがすべて実費となり、かなりのお金がかかる。息子に合った車椅子は絶対に必要だった。
しかし、主人は障害者手帳を取得することを拒んだ。
「お前は自分の息子を障害者にしたいのか」と言われた。
手帳を取得することで、社会的に障害者になるということが受け入れられないようだった。
説得に半年くらいかかったように思う。
当時の息子のリハビリの先生が「お父さん、障害者手帳を取得しても、必要なくなれば更新しなくていいんですよ。昔、障害者手帳を持っていたと何かに記載されるようなこともありません。」と話してくれたことでやっと手帳取得することができた。
将来、健常者になれたときに障害者手帳を持っていたということが息子にとって何らかのデメリットになると思っていたのかもしれない。

同じように手帳の取得の説得に時間がかかったママ友とよく、「女性は現実を見るけど、男性は夢を見ていたいんだよね。」と話していたことがある。

母親の私たちだって、手帳の取得が必要だと考えて夫を説得していた時期は、障害受容はまだまだできていなかった。
ただ、現実を受け入れて子供のために動いていかなければならなかった。

でも救いだったのは、夫やママ友の旦那さんの場合、障害者手帳はなかなか受け入れられなかったが、子供のことは大好きだった。病院やリハビリにも付き添う時間があるときは付き添ってくれていた。
学校に通うようになった今も、学校行事に参加できるときはしてくれる。
良いパパなのだ。子どもたちにとっても、私たちにとっても。

現実を受け入れるのが早いか遅いか。それだけだったのかもしれない。

障害受容は、今はもうできている。
息子も中学生、生まれて10年以上経つのだ、きっとできている。
多分、できている。
私も、夫も。
きっと。



ちなみに、うちの家のトイレはとっても広い。
というのも夫が「息子がずっと車椅子だったとしてもトイレを使えるようになるかもしれない。」という夢をまだ見ているときに建てたからだ。

たまには夢見てもいいよね。
本当は息子とキャッチボールをするのが夢だったんだから。
叶えてあげられずに、ごめんね。






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