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小説"Woman, Girl, Other":12人の英アフリカ系女性(とLGBT)の人生を描く

本作は、前に言及したMargaret AtwoodのThe Testamentsと同時に2019年ブッカー賞を受賞。まだ和訳はされておらず、その主題(イギリスの黒人女性やLGBTの物語)も踏まえると、実際和訳もされるのか微妙なところではあるが、立場の違う私にも興味深く読めるものだった。

物語の全体の構成は、①アフリカ系で、②生物学的には女性の出自であり(タイトルの女性、少女、それ以外というMECEな表現が表しているように、LGBTも含まれている)③イギリスで生活をしている、という3要素は共通している12人の女性(とそれ以外)の物語が、少しづつ絡み合いながらもそれぞれ丁寧に語られるというものである。この語り口がこの本の魅力の根幹となっており、また著者のメッセージを効果的に読者に伝えることに成功している。

前述の3要素に所属する場合、世間からはひとくくりに見られてしまう傾向があるが、与えられる物語の多様さがこの暴力的な見方(=偏見)を懇切丁寧に却下しているようである。そして何より、このような人々はこれまでの文学作品では声を与えられることがなかった中で、それをすべて12人の主人公として描くことに強い価値がある。さらに、ある登場人物から見た別の登場人物(別の章における主人公)が描かれることで、同じ立場にある女性同士でも生じうる無理解や価値観の相違を描き出している。

その多様さの中でも、女性やアフリカ系であるということにより経験する共通した苦境が物語を通じて描き出され、読者としては共感や反感などを覚え、それぞれ見解を述べたくなるところかとは思うが、これに対する著者のメッセージは最後の締めくくりの一文のとおりだろう。

This is not about feeling something or about speaking words/ this is about being/ together

思えばThe Testamentsも三人の女主人公の物語が描かれる構成だった。社会の片隅で生きる者に声を与えること、それはSNSが登場する前からまさに本/文学が担ってきた役割であることを思い出す。常に良くも悪くもインフルエンサーな人々のすでに大きな声をさらに拡張するような本(自己啓発本等haha)も否定するべきではないと考えるが、読者にとっての選挙行動といえる本の購入活動を通じて、この自分の考えを示していきたいと思う。

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