8番出口の裏方
8番出口というゲームが爆発的に人気だ。
今や大喜利のテーマとなり、しばらくは話題となりそう。
どのようなゲームかを簡単に説明すると、駅の出口である8番出口を目指すため、異変を察知すること。
とても簡単なゲームシステムであるが、「異変」を提供する側は大変だ。
「8番出口アップデートに伴い、異変を新たに追加するか悩んでいますがどうですかね?」
「そうですねぇ…映画シャイニングネタも入れましたし、ここはUsみたいなネタでも入れましょうか?」
自己承認欲求高めの構成作家がそれっぽい発言をしているが、彼はこのゲームの立ち上げの際、「いいんじゃないっすかね」としか言わなかったはず。
このゲームがバズったあたりから、SNSでイキっているのが引っかかる。「人物の異変じゃなく…看板の数とかにしましょうか…私のモデルをアップデートの時に変えても良いですよ」
「この作品はパウさんありきだから無理だよ」
ゲームで唯一の登場人物と言えば、すれ違う通行人だ。早歩き、ニヤニヤする、異常にデカくなるなど、さまざまな変化をしてきたすれ違う通行人のモデルを、パウエルさんが提案する。しかし、もともと彼の異変のアイディアは彼自身が考えたものだ。どうして彼が…。
「うちの妻にバレちゃって…。あの日子どもの運動会の日だったんですよね…あの時はストレス発散メインでやっていたのですが、こうなるなら慎重になるべきでした」
本業でやっていれば別の話だが、趣味でゲーム制作に携わっていると誤算だったかもしれない。
同じように考えるのであれば、所属事務所にこっそり活動していたイラストレーターの斉藤さんも同じではないだろうか。きっとこの作品で仕事が増えたに違いない。
「思い切ってデザイン変えましょうか!?」
「え?今のデザインで良いと思うけど」
「ファンの人からアップデートの時は全面にキャラクターデザインを変えた方が良いっておすすめされたんです」
どうやら、我慢できず自慢したのだろう。よくあるといえばよくあることだ。
「知り合いに、美容外科をやっている先生がいてその人の顔をここに」
そのパターンか…。このゲームの異変を増やし、アップデートしたところでユーザーは飽きているかもしれない。
「これじゃ…次のアップデートまで間に合わないよ!なんとかアイディア出して次につなげましょうよ」
制作者よりやる気になっているのが、開発資金を提供したスポンサー会社だ。この人も最初「まぁトントンでうちは良いので」と言ってたが、彼も様子が…待てよ、構成作家、モデル、イラストレーター、スポンサー。このゲームの開発者、俺を除いて異変が生じている。
ということは…この会議の部屋を今すぐ出ないと…俺がこの会議に永遠に脱出できないかもしれない…。
※この作品は8番出口と全く関係ない妄想ですが、知名度が爆上がりした途端変異体になった人々を嫌というほど知っています。