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ぼっち the ランナーのbots!! 都知事選前に昼ランマニフェスト


0’00’00 / 0キロ

昼にジョギングする時は、爆弾に気を付けたほうがいい。
それはつまり犬猫の糞である。
さすがに犬の糞は少ないが、写真を撮られたり餌を与えられたり、私たちに癒しを与えてくれる猫は、用を足すのも自由。
闇夜ではステルスなので地雷と呼んだ方がいいかもしれない。
昼と夜ではこうも違う街の風景。
そんなことを考えながらも、意識は右膝の様子に向いていた。
このところ3キロ付近で膝に違和感が走り、5キロ地点では脚がもげるのではという痛みに襲われる。ランナー膝というらしい。「走らなければ自分が自分でなくなってしまう」という人間から奪われようとしているこの営み。
俺はなんのために走っているのだろうか。
走る前日は、走りたくて仕方がない。走る道中、自分が何をやっているのか分からなくなる。
今のところ、膝の爆弾は沈黙している。

0’07’27 / 1キロ



この衛口河区のジョギングコースは数十年前に整備されたものだ。
所々ひびが入り、ケンケンパの〇のラインも薄くなり、夜間照明のメンテナンスは適当だ。
今では釣り人、高校生カップル、ブリーダー、海外コミュニティ、楽器を演奏する人、ウォーキング勢、そしてランナー、行き場のない人たちが集まる。たいへん有意義な事業に区民税が注がれている。
私たちは、良かれと思って働いているのに、いつの間に給料の三~四割は天引きされていて、これで働くモチベーションを求められても、中指を立てるしかない。
もしここにタワマンができたら、ビタワンを与えられた移住タワワンによるタワフンが増えるだろう。意識の高い飼い主はタワフン回収マナーを守るだろうけど、やはり数パーセントは残るのではないか。
もしここに巨大イオンができたら、雨風は防げるだろう。フードコートでだべることはできるだろうが金が吸い取られる。何もオーダーしないでテーブルを使っていいのかという、権力にとって都合の良い良心の呵責からコーラのひとつでも頼む人もいるだろう。長居はできない。ある時、無限に意地の悪いマーケティング理由で、無料の給水機が撤去され注文した人だけに提供する性根の腐ったシステムに切り替わったら、そこは人気がなく薄ら寒い空間になることは想像に難くない。
21時か22時にはシャッターが閉められる。建造物として多大な維持費とその消費活動は吸い取られ、強者は更に強くなり、弱者は更に奪い取られる。生まれる雇用は「点」でしかなく、やがて打ち捨てられる。

犬は夕陽を見つめる。
飼い主はスマホ。
冬は北風が海の方へ。
夏は南風が河に逆らって吹く。

0’07’33 / 2キロ



錦糸町は雨だった。
令和六年七月七日投開票を迎える東京都知事選挙に出馬した蓮舫候補のタウンミーティングは14時からだったが、早く着いたのでウインズ錦糸町で雨宿り。
波乱含みのレースだったが、どうしたことか馬券は的中しない。

ゲン直しにトイレに入った。
和式だった。ウインズ新宿はシャワートイレ完備だったが、錦糸町は整備が遅れているらしい。
夏に思うのが、トイレに九死に一生を得た思い出だ。10年前、酷暑で全身の血液が熱を帯び、手足が痺れ、もう崩れ落ちそうな夕方。外打合せは終わったが帰社しなければならない。
エネルギーは奪われ思考はただただ虚ろ。汗だらけの服を一刻も早く着替えたいが水分の取りすぎで腹がゴロゴロ。そんな時偶然出会った冷水のトイレシャワー。
俺は蘇った。
火炎地獄から天国へ。
「水のシャワーで直腸から涼を取り、体調が復活する。日本が誇るこのイノベーションは、熱中症対策へのベストな回答だっ!」
呪文のように叫ばれる水分補給。いったい誰か経口だけと決めたのか。喉から胃はとっくに水分過多で細胞の浸透圧がバカになっている。
下の口から体温を調整する逆転の発想に拍手を贈りたい。
それに引き換えどうだろう。
地球沸騰化という現実にあってもインフラ整備は驚くほどスルーされ、高騰する電気代でクーラーをぶん回すだけ。
クーラーは肌が乾燥する。
クーラーは冷房症という副産物の病を生み出してしまった。
クーラーで室内を冷やせばいいという安直な発想は、例えば悪い部位は切り取ればいいという西洋外科医療の単純思考に似ている。。
ところが最近のトイレ事情。シャワーの温度調節ができないタイプが多い。確かに一年中ぬるいシャワーは、ホット派、クール派の両者からツッコミを避ける、玉虫色の答弁だろか。
温度調節のツマミをなくしてコストを減らす。トイレ会社にとってはユーザーの快便性は眼中になく、いかに高コスパで法人契約を取るかが大事なのだ。

0’07’15 / 3キロ



そんなことを考えながらトイレを出た。
ウインズの客層も変わった。つい最近まで缶チューハイ、たばこ片手の馬券オヤジが群生していたが、女性や若者も増えてきた。しかしまだまだ踏ん張る馬券オヤジたち。
独りの老人が興奮して「蓮舫来てるよ!蓮舫来てるよ!」幾度も同じことをわめいている。誰かに言っているのではない。
この場所は街中と違い電波系が少なくないことから、別の電波系同士共鳴しあう。「ああそう、蓮舫」と電波を受け流す別のおっさんは去ったが、その老人は続ける「あんなのイヤだよ。小池でいいよ小池で!」。その電波は近くの若者グループがキャッチし、一瞬ざわめきが生まれたがすぐにレースの話題に切り替わった。

14時。蓮舫のタウンミーティングが始まった。「マイノリティに光を当てる」と彼女は言う。マイノリティはその言葉に弱い。問答無用で涙が出るのだ。現実問題、もし当選しても、マイノリティの救済は困難が待ち受けているかもしれない。でもいいじゃないか。
俺はロスジェネ。就職氷河期には、新自由主義というキャッチーなワードを都合よく政治利用されていた。これは、新自由主義を履き違えた心中主義ではないか。
蓮舫の後方には楽天地シネマがある。「フィリオサ・ザ・マッドマックス・サーガ」のサイネージ広告が展開した時、フィリオサと蓮舫がオーバーラップしたのは偶然だろうか。。

怒号。
まるで粘つく地面から生えてきたというべきか、とろけたドカベンというべきか、BWHが等しく100センチで低身長、おろらく近所の昼飲み酒場から飛んできたと思われる赤黒い顔の胴間声が叫ぶ「演説おもしろくねえ。男がいいよ!男の知事がいいよ!」。
周囲からウルセーの声。係の人が張り付く。

そうだ。
このヤジ男にせよ、ウインズ錦糸町の電波ジジイにせよ、これがマジョリティなのだ。
おくら俺が、百合子の
セックスと嘘とビデオテープと、
ではなく、
嘘と見栄と承認欲求
が行動原理なことを知っていても、そんなことは誰も知らないし関心もない。テレビで報道もしない。
俺はマイノリティなのだということを改めて自覚する。
ただマイノリティで何が悪いと思う。
自分だって、テレビばかり観ていたらそうなるかもしれない。

That’s ポピュリズム。
百合子の発言は旧い。
何が旧いかというと、数字と横文字を織り込む30年前の化石論法なのだ。
数字の根拠も示さず数字だけ強弁する言い逃げ。
横文字は血肉や歴史の浅いコトバで、ふわっとイメージだけが残り、誰も分からない。
まるで猫だまし。相撲は一年六場所各十五取組の長期戦で、猫だましのような奇襲が通じるのは運が良くて年に一度だろう。
しかし選挙は、四年に一度煙に巻けばいいのだ。
権力の魔力。それだけがただなんとなく薄気味悪く伝わってくる。

そうだ。
もし俺がマニフェストを作るなら

(働き方改革)「推し候補が落選し現職サイコが当選するデタラメに耐えられない休暇」
(熱中症対策)「都のシャワートイレは温冷選択制となるよう助成」
(暮らし)「公園の保守、森林伐採や商業施設の介入は以ての外。公園の増設。」


雨が降ってきた。
前の人が傘を広げる。
視界が塞がれる。

0’07’23 / 4キロ



4キロを過ぎても膝の痛みは少ない。今日のレギンスは圧力強めだった。

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4.52km
時間 0’33’33
カロリー 326kcal
平均ペース 0’07’25
歩数 5,618歩


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