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幸せの4因子からコロナ禍の孤独・不安の原因を考える


幸福研究の動向

ウェブ・オブ・サイエンスという学術文献データベースで、「well-being」または「happiness」という単語が含まれる論文を検索すると、1980年代にはほぼゼロだった論文数が2000年代から急激に増え、2010年代には300をうかがう数で推移していることがわかります。
日本においての幸福学は、幸福学について多数の著作がある慶應義塾大学ウェルビーイングリサーチセンター長 前野隆司さんが有名です。

6月24日(水)7:30〜9:00に、「朝渋ONLINE」で前野さんが登壇されるイベントが開催されます。幸福学に興味がある方は、参加してみてはいかがでしょうか。

幸せの4つの因子

前野さんの著作の中では、幸せには4つの因子がある、ということが書かれています。

(1)やってみよう因子(自己実現と成長)
 夢や目標を叶えた人、夢や目標を持っている人、努力し成長している人は幸福感が高い。

(2)ありがとう因子(つながりと感謝)
 いろいろなことに感謝する人、親切で利他的な人、多様な友人を持っている人は幸福感が高い。

(3)なんとかなる因子(前向きと楽観)
 自己肯定感が高い、楽観的でポジティブ、細かいことを気にしない人は幸せ。

(4)ありのままに因子(独立とマイペース)
 人の目を気にしすぎない、自分らしさを持っている、自分のペースを守る人は幸せ。

様々な統計解析をしたところ、この4つの因子のうち、どれが欠けても幸福度が下がるという結果になったそうです。

ありがとう因子

ありがとう因子を詳しく見てみると、以下のような因子があります。

・人を喜ばせる(人の喜ぶ顔が見たい)
・愛情(私を大切に思ってくれる人たちがいる)
・感謝(私は、人生において感謝することがたくさんある)
・親切(私は日々の生活において、他者に親切にし、手助けしたいと思っている)

他者との心の通う関係に関する項目が並んでいます。

在宅勤務の頻度が高いほど孤独感は高くなる

では、ここ数ヶ月で急激に増えている在宅勤務をしている人は、他者との関わりをどう感じているのでしょうか。

パーソル総合研究所の調査によると、「孤立していると思う」と回答した人は28.8%(図表5)います。また、在宅勤務の頻度が高いほど孤独感は高くなるということがわかりました。

また、リアルな場で顔を合わせる「対面」の場合と、リアルな場で顔を合わせない「非対面」の場合を比べると、「非対面」の方が「報告」「連絡」「相談」「雑談」のすべてが行われない傾向にあることがわかりました。「非対面」の中でも、在宅勤務でよく使われる「Web会議、テレビ会議」では、それらがさらに行われていないという結果が出ました。

オフショア開発から学ぶ非対面での職場のつくりかた

オフショア開発とは、業務ソフトウェア開発やWebシステム開発、運用保守管理などを海外の開発会社や海外子会社にアウトソースすることで、開発コストを削減する手法のことを言います。

「ゼロからわかるオフショア開発入門」には、多数のオフショア開発成功事例が掲載されています。オフショア開発では、海外にいる人たちとのコミュニケーションは非対面のコミュニケーションをせざるを得ません。上手くいっている会社は、以下をしているようです。

・「毎日、顔を見て話すこと」をルーティンにしておくほうがよい。用があるときだけ連絡を取り合うのではなく、毎日決まった時間に顔を見て挨拶をする習慣にする
・オフショア開発チームと上手くいっている会社は、画面越しで顔を見て話すチャンスを定例でなくとも、かなり頻繁にあえてつくっている

この取り組みでは確かに、「人の喜ぶ顔が見たい」「私を大切に思ってくれる人たちがいる」「私は、人生において感謝することがたくさんある」「私は日々の生活において、他者に親切にし、手助けしたいと思っている」という人間関係につながるように思えます。

「用がなくても画面越しでも顔を見て話す機会を頻繁につくる」が、幸福学の研究結果と、オフショア開発の成功事例を照らし合わせて考えてみても理にかなっていると言えそうです。

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