忘年会で束の間の孤独

 忘年会は新宿の歌舞伎町で行われた。大人数での集まりが苦手にも関わらず、上司からの誘いを断り切れずに渋々参加をすることになったが、普段会う事がない人や、話したこともない人たちが大勢の飲み会は退屈で孤独である。
 ほどほどに仲の良い人達とほどほどの話をして、お酒を飲む。人との会話が著しく苦手な僕は退屈で、人と話しながら心の中では孤独を感じている時がある。
 会話の途中、ちょうど良いところで席を立ち、タバコを吸いに行った。喧騒から解放されて一人になった時、一人なのに妙な暖かさと安心を感じた。従業員に喫煙所の場所を聞くと、案内されたのは屋外の非常階段で12月の寒空の下、上着を持って来なかった事を後悔した。
 寒空の下、身を震わせながら吸うタバコは格別である。束の間の一人の時間が心地良い。外に目を向けると夜の歌舞伎町にいるのだと実感する。鮮やかに光る青やピンクの看板が綺麗で、客引きの呼び込む声や会話が騒々しいはずなのに妙に心地よく感じる。どこか卑猥で乱暴なイメージがあり嫌悪していた街だったが、寂しそうで他人行儀なこの街にシンパシーを感じた。

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