![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/27202308/rectangle_large_type_2_a56a66b731a532a72ffa1c76a109dd96.jpeg?width=1200)
プリンセス・クルセイド 第3部「ロイヤル・プリンセス」#3 【フローラ、華のように】1
「ふう~っ、よかった。なんとか勝てた」
リビングのソファにもたれかかりながら、アンバーは天を仰いだ。
「薄氷の勝利……というよりは、ほとんどズルですわね。あのような力の使い方があったとは」
水晶に映る、牙のように歯が伸びたタンザナの姿を見て、イキシアが呆れたように呟いた。
「この女、ヴァンパイアだったのか? 実在していたとはな。面白いこともあるもんだ」
ルチルは都合5杯目のコーヒーを飲み干すと、満足げに笑った。
「あの、ルチル王女。タンザナさんは確かにヴァンパイアですが……」
「うん? ああ、心配するな。別になんとも思っちゃいない」
ためらいがちに伺いを立てるアンバーを、ルチルが一蹴した。
「イキシアやアンタが一緒にいるってことは、害はないってことだろ? 特にこの王女様は、何かあればすぐにここの王子にチクるだろうからな」
「随分な言い種ですわね、ルチル」
水晶の映像が途絶えたのを確認しつつ、イキシアがルチルの言葉を聞き咎めた。
「いやいや、本当のことじゃないか」
ルチルが口の端を緩めてニヤっと笑う。
「どっちにしても、これでインカローズも負けた。アンタらが大分有利になったってわけだ」
「いえ、それはどうでしょうか」
ここまで黙っていたジャスティンが、ルチルに反論する。
「ルチル王女も先程おっしゃっていたではありませんか。まだフローラ王女がいると」
「フローラか。確かにこういう戦いなら、お節介焼きのアイツが一番手強いかもな。だがまあ、そうは言うもののーー」
その時、ルチルの話に割り込むようにして、玄関の呼び鈴が鳴った。
「おいおい、まさか噂をすればってヤツじゃないだろうな?」
「分かりませんけど、可能性はありますわね……」
イキシアが眉根を寄せつつ、アンバーに視線を送った。アンバーは静かに頷くと、玄関へと歩いていき、静かに扉を開いた。
扉の先には、髪の長い女性が立っていた。
「……突然お邪魔をいたしまして申し訳ありません。私はフローラ・ダリア・ラングデイル。イナアハム王国のプリンセスです。こちらへは、プリンセス・クルセイドを行いに参りました」
女性は決断的な口調でそう言うと、恭しく頭を下げた。彼女の言葉どおり、その腰に聖剣が差されているのをみて、アンバーは静かに息を呑んだ。
2に続く
いいなと思ったら応援しよう!
![Sheep Magazine](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/4179280/profile_32ee3392da10168a519eebda8a60fbb7.jpg?width=600&crop=1:1,smart)