2017年9月の記事一覧
プリンセス・クルセイド #4 【戸惑いと友情】 2
アンバーは改めて目の前の少女をまじまじと眺めた。赤毛に緑色の瞳、聖剣を腰に差しているその姿は、間違いなくメノウだ。
「私の顔に何かついているか?」
そう言ってメノウは、いたずらっぽく自分の顔を触った。その手は繊細で美しく、白魚のように透き通っている。
「……」
その姿を見て、アンバーはある種の奇妙な感覚に囚われた。メノウは間違いなくそこにいる。しかし、どこか非現実的な雰囲気が漂ってい
プリンセス・クルセイド #4 【戸惑いと友情】 1
アンバーはキッチンに立ち、朝食の準備をしていた。お盆に2人分の食事を乗せようとして一瞬ためらう。
「……あっ、これでいいのか」
しかし、思い直して料理を乗せ直した後、一言独りごちてから食卓へと持っていく。
「朝食、できましたよ」
食卓に入ると、アンバーは先に席に着いていた茶髪の女性に声を掛けた。
「ありがとうございます、アンバー。良い香りですわね」
茶髪の女性、マクスヤーデン王
プリンセス・クルセイド #3 【心の剣】 12
穏やかな春の太陽が、青く澄み渡る空高くに輝いている。時刻はまだ正午前だろうか。そろそろ昼食のメニューを考えなければ。アンバーはそう考えて隣に座るミーシャを見た。彼女は何も言わずに俯いている。厩舎の地面の上に直接へたり込んでいる格好だが、アンバーはそれを咎めず、自らもその場にしゃがみ込んだ。ミーシャの腕の中には刃を折られた聖剣が抱かれている。アンバーが先程チャーミング・フィールドで斬撃波で葬ったも
もっとみるプリンセス・クルセイド #3 【心の剣】 11
周囲を炎に囲まれる中、エリカは聖剣を振り、目の前の相手にさらなる炎の魔術を容赦なく浴びせていった。
「ふんっ、はあっ、やあっ!」
しかし、相手のプリンセスは閉じられた鉄扇を怯むことなく振るい、炎を薙ぎ払っていく。茶色の髪を靡かせ、暑さから生まれる汗を弾き飛ばしながら向かってくるその姿は、あたかも舞いを踊っているかのように艶やかであった。
「やりますね……イキシア王女」
エリカは埒の明