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一日一文まとめ

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ほぼ毎日一文ずつ更新される小説『一日一文』がまとめて読めるマガジンです。
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2017年12月の記事一覧

Take Me Out to The... 第26週

「何がだよ?」

 透は高梨の顔を見て聞き返した。大分収まってきたニヤニヤ笑いだが、女神の笑顔と違って気色悪い。

「そりゃあ、結城さんはきれいだし、素敵な人だと思うよ? だけどさ、なんて言ったらいいかな…」

 高梨の視線が言葉を探すようにして宙を泳ぐ。

「ちよっと掴みどころがない感じだろ? 攻略法が分からないと言うか……変化球ピッチャーってタイプだな」

つづく

Take Me Out to The... 第25週

「なんだよ、いつもぼーっとしながら結城さんを見てるじゃないか」

「……俺、そんなに見てる?」

 透は何故気付いたのかとは聞かなかった。日頃からあまりに熱心に結城千尋の観察を行っていたため、ばれるのも時間の問題だとは思っていたからだ。

「見てたよ~。お前いつもそうじゃんか」

 先程から笑いっぱなしの男子、高梨が透の肩を軽く叩く。

「でもさ、正直言って不思議だよな」

つづく

Take Me Out to The... 第24週

 それでも、透の視線はちらちらと女神の姿を捉えていた。彼女は野中を始めとする女友達と楽しそうに話している。そして時折こぼれる笑顔を見るたびに、やっぱり近くにいたほうがよかったと後悔するのだった。

「なんだよ、透。また結城さんを見てたのか?」

 周囲の男子の中のひとりが、透に声をかけた。

「えっ……またって何が?」

 透が話を理解できないでいると、話しかけてきた男子はニヤニヤ笑いを浮かべた。

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Take Me Out to The... 第23週

 この次は、角度を変えてこちらからアプローチするのが良いだろう。何か共有できそうな話題、できれば趣味なんかが知りたい。

「じゃあ、そろそろ行こっか」

 野中の一声で、駅に集まった一行の移動が始まった。しばし物思いに耽っていた透も、適当に集団へと加わった。さすがに結城千尋の隣には並べない。周囲の目というか気恥ずかしさというか、とにかくそういったものに圧されてしまう。

つづく