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窓際のおっさん 役所技術系の縦割りな現状(2/4)

 前回は、役所の技術系の縦割りな現状の弊害を語るために、水道で、大事な安全基準の採用が見送られた経験を述べた。
 今回は、逆に合致しない基準がゴリ押しされた経験について、再び筆者の体験を述べ、どうすべきかの触りを語りたいと思う。


■ 棲み分けは仕方がないが、人間が面倒(続き)

 ② 逆に他局の流儀のごり押し

  前回と逆パターンだが、今度は工場現場系の部署で、ボイラ補機の施工について、どちらの設計基準を採用するかという話になった。どちらのというのは即ち、「工場の給湯設備の設計」に際して、これはボイラの基準か、公共建築工事標準仕様における給湯器用の水槽の基準か、という議論である。

  公共建築工事標準仕様は、どの地方自治体でもそうだが、花形部署である「建設」のスタンダードな基準である。
 もう一つの花形である「土木」の基準もそうだが、これらの基準は花形部署であることから、その部署出身の職員の声は大きい。
 また、部長級や局長級、技術管理や検査・監査の長は花形部署出身者が占めているため、やはり公共建築工事標準仕様の格式は高くなりがちである。結果どの現場でも、とりあえずとして真っ先に適用されがちという問題が生じている。

  今回も工場とはいえ、建物全般の事と捉えられ、花形部署出身の上司が、公共建築工事標準仕様を振りかざし始めた。そして規模の大きなボイラの補機である、給湯用水槽が、学校等のお湯溜めの基準で語られ始め、工費を下げるために、鋼管(黒管)ではなくポリエチレンライニング鋼管を採用してはどうかとの話になり、
 いやいや、それじゃあ溶けちゃうよと、現場でボイラを使用したことのある人間(筆者・施工業者)との間で一悶着が生じた。

 公共建築工事標準仕様は小学校や、役所の庁舎といった、不特定多数の人が出入りする一般的な建物に向いている標準仕様であるから、工場のように用途が限られて特殊な建物には向いていない基準も多々ある。工場で使用する規模の大きなボイラから出るお湯は使用量が多く、回転も速いため常に煮えたぎっている。
 一方の学校等の小さなお湯溜めでは、ある程度溜めてからちょっとづつ放出されることが多いのでお湯と言っても、エネルギー量が全然低いため、ライニング鋼管でも問題がない。ちょっと考えれば分かることなのだが。。。

 ボイラにはボイラー構造規格など、それなりに公にされている基準があり、民間の製品では多くはこちらを採用しているのだが、それでも役所では、公共建築工事標準仕様への信仰の強さが邪魔して、なかなか設計にOKが出ない。一方で現場での利用に耐えられないので、過剰な設計に流れやすい(例えば今回だとオールステンにするしかない)という問題がある。

  縦割りとはやや違う話と思う人も居るかもしれないが、それぞれの縦割り組織の中でルールの適切な棲み分けや統合が出来ておらず、その中で縦割りの一番太い幹を主流としいるという妙な慣習になっている。ある種の縦割り組織の弊害の表れでもある。

■ ではどうするか

 理想を言えば「連携と統合」そして「他部署の基準の尊重」という事になるのだが、それが出来れば苦労しないだろう。

 とはいえ例を元に工夫できる余地があるとすれば以下の点ではないだろうか。

 ① いろいろな部署のやり方を経験した人を決定権者につける
 ② Off J T が手厚い人を決定権者につける
 ③ 何を優先するかをもっと明確にする
 ④ 型にとらわれず、批判から入らない

 一つづつ詳述していく。

 ① いろいろな部署のやり方を経験した人を決定権者につける

 前回の例を出すと「水道だから土木の基準について責任をもてない」といった事なかれ主義の判断であるが、一般的な認識からすると、穴を掘る以上は土木ではないだろうか。水道管を埋めるのは水道であって土木ではない等という理屈は、色々な事情があって調整が難しいにしても、詭弁でしかないだろう。
 まして安全に係ることであれば無視しては問題にもなる。

 こういう理屈を言わせないためにも「あなた昔、道路管理に居ましたよね?」という状況を作れるように、決定権者に複数の関連部署を横断した人間を据えるべきであるとおっさんは思う。

 また、この例についてさらに踏み込むと、この言を垂れた人間は、現場施工・現場監督の経験すらない人物であった。図面管理担当でありながら、図面を単なる書類と同列に扱うような、事務畑の名ばかり技術職であったのだ。

 技術は特にそうだが、現場や対外交渉と言った書類以外の仕事について、一定程度の感覚が無ければ話にならない。多方面の経験が足りない人間をなるべく決定権者から遠ざける必要があるのではないだろうか。

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