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読了のおっさん36 黄金バット 大正髑髏奇譚 (山根和俊(作画)神楽坂淳(原作)/チャンピオンRED)

久々のマンガレビュー(前回は令和6年8月16日投稿)。
試験明けたので一挙に読めるぞ。

今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。

概要的なネタバレは含みます。

黄金バット 大正髑髏奇譚
(山根和俊(作画)神楽坂淳(原作)/チャンピオンRED)
2023年~2024年 全3巻(完結)

■ タイプやテーマなど

 黄金バット、大正時代、大日本帝国軍、歴史もの、秩序と自由、テクノロジー、
戦争、ロシア、美女、怪異、人類社会、人間

■ 簡単な内容

 陸軍少尉の月城竜史(つきしろりゅうじ)が、謎の洋館で謎の美女、星船美月(ほしふねみつき)と戦い、死闘の末命を落とすところから物語が始まる。
 落命しつつある月城の意識に、突如黄金バットが語り掛け、月城が黄金バットの依代となることを提案される。
 月城はこれを受け入れ、以後黄金バットの力を覚醒させながら、日露戦争後の時代を特務を遂行する軍人として生きていく。
 昭和の紙芝居とアニメで知られる黄金バットとは設定が異なるが、本作はその元となった事実として語られている。

■ 読みどころ

 キャラクターが美しい。濃い線でキリっと描かれているが、男は男らしいヒーロー、或いは軍人として。
 女もまた心身の強さを感じさせる妖艶で美しい描かれ方である。とはいえ、全編を通して登場人物の殆どが人間ではない(元人間か怪異に変貌した者)であるので、そういう意味では、このような完璧美の描き方になるように思う。かくも親しみやすさよりも読み手の憧れが勝るような鮮烈な魅力である。

 短いが歴史ものでもあり、その時々の重大な国際情勢や、当時の日本社会の様子が、絵にもテキストにも表れている。よって完全なオリジナルの世界観と違って、すぐに物語にのめり込める舞台でもある。
 また、昭和の勧善懲悪モノ、謎解きアクションといった、所謂子供向けのストーリーに留まらず、「秩序と自由」「人類社会」という、非常に考えさせられる内容であり、短いが読むべきところが多々ある。

■ 雑多な感想

 時代が時代だけに、黄金バットについては、おっさんも「どこから来るのか黄金バーット♪」のフレーズぐらいしか知らない作品だったが、本作をきっかけに、発掘して見返してみたい気持ちになった。
 ストーリー全体は一本道でシンプルであり、強さや戦闘の描写などは分かりやすく、非常にテンポが良い。想像にはなるがバトル面は昔の黄金バットファンにも懐かしさや親しみやすさを想起させるのではと思う。

 また、非常に個人的な見解だが、男性よりも女性キャラクターのほうに気持ちや目線を奪われる。主人公サイドにも悪役サイドにも女性キャラが居るのだが、妖艶で古風、強くて恐ろしい、ミステリアス、そして立ち位置や容姿、心情の変化が大きいといった特徴があり、カッコいい男性ヒーローよりもおっさんは惹かれた。

 かと言って、昨今の違和感の大きい女性優位の風潮に乗っかった表現というわけではなく、古代の母系社会の価値観や、美女そのものへの憧れが感じられる。
 なんとなく昔の手塚治虫作品の価値観もあるように思えた。そしてそこに、現代風の知見や表現が付加されているといった具合だろうか。

■ その他

 アトランチスの話が出てくる。中世の終わりから近代辺りの物語で、オーバーテクノロジーや怪異を説明するためによく出てくるのだが、本作もそうだった。無論、悪いと言っているわけではない。魅力的な時代背景に古代アトランティス文明の超化学が加わると物語が重層的に魅力を増す。

 この辺りは、産業革命以前のストーリーでは神そのものや、もののけの類で説明することも多いのだが、発展しつつある近代に、メカメカしさと共に自然に溶け込んでいく概念たるや、やはりアトランティスである。

 黄金バットのライバル、暗闇バットも登場する。月城少尉と同様に依代が存在するのだが、キャラクター造形も含めてそこがまた面白い。
 3巻で終わってしまったが、この暗闇バットとの幾度もの戦いで、別のストーリーがもっとできるのではないかと思う程に、良いキャラクターだった。

 全体として3巻の量は、駆け足ながらも、内容とストーリー展開に合致しているように思うのだが、まだまだ楽しみたかったという気持ちにさせてくれる。

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