見出し画像

読了のおっさん29 ミステリと言う勿れ(田村由美/月刊フラワーズ)

今日も、おっさんが全巻読んで面白かった漫画をご紹介です。
個人の感想であり、感じ方はそれぞれなれどご参考に。

概要的なネタバレは含みます。


ミステリと言う勿れ(田村由美/月刊フラワーズ)
2017年~ 既刊14巻(2024年6月現在)

① タイプやテーマなど
 ミステリー、記憶力、現代劇、大学生、人間論、悩み、しがらみ、家族、男女、癖毛、カレー

② 簡単な内容
 アフロヘアのおとなしい大学生、久能整(くのうととのう)は、平穏な大学生活のさ中、突如殺人事件の容疑者として事情聴取される。久能の個性的な人柄や考え方に、刑事たちは興味を惹かれ、自己開示と同時に事件の断片を久能に語っていく。久能は持ち前の記憶力と推理力を駆使して、疑いを晴らすが、以後、偶然にも複雑な事件に巻き込まれるなどして、何かと警察の厄介になることに。。。
 かくて久能は、その後の断片的な事件の犯人や被害者とも関わりを深めていき、壮大な事件の真相へと迫っていく。

③ 読みどころ
 謎解きよりも、展開そのものの意外さが読みどころであると思う。通常多くの人が把握していないと思われる、文学や芸術、歴史の知識が謎解きのキーワードに多用されており、ウンチク的な面も楽しめる。また、久能本人の言葉を介して、男女関係や家庭問題などを中心とした社会風刺的な思想の発信も多々あり、考えさせられる。久能の思想や人間社会に対する考察は、事件解決に関わる面も当然あるのだが、どちらかというと、どこか関係者(被害者加害者双方)をいたわるような、世の中なぜこうも苦しくて生きづらいのだろうといった深いメッセージが感じられる。

 非常に異質で他にない展開であるが、かくも単なるミステリーものという読み方では収まりきらない興味深い作風である。



④ 雑多な感想
 内容はあえてカテゴライズするなら、やはりミステリの分野だとは思うのだが、漫画のタイトルの通り作者がそれを否定している。否定するだけあって、確かに謎解きや推理を前提とした読み物ではないようにおっさんも感じる。事件が起こって、それを主人公が解決していくという枠組みはあるものの、そこまでのアプローチが普通ではないと思うし、どちらかというと思想の発信と人間ドラマがメインに感じる。
 「常々思うのですが」から始まるそれらの思想の発信は、社会問題のうち、特に家族問題や男女問題、子供が素朴に思うような人間どうしの課題などについて、疑問と同時に「こうだったらいいよね」という解答まで含めて語られる。都度都度時には数ページに渡って、事件そっちのけで語りが始まり、当事者が時に動揺し、時に慰められ、時に呆れ、時に考えるという展開となる。そして事件が実態的にも精神的にも解決に向かっていく。こうやって、思想を発信する方法もあるのだなと感心するところでもある。


⑤ その他
 ドラマが出ている。ドラマ化は各局で争奪戦だったようで、フジテレビ系列が射止めたが、そんなこともあって原作者も前のめりのように思う。
原作者書下ろしのエピソードもあるため、ドラマは楽しめるのではないかと若干期待している。
 現代劇であることと、ファンタジー要素が無いこと、キャラクターも変わっているがおとなしめであることから、
恐らくあまり違和感のない展開になるようにおっさんは予想している。が、ざっと見た感じ恋愛要素が強めに出ているようだ。
 同い年の子供同士ならともかく、大学2年生に現役の女性刑事が惹かれるだろうか。。。パトレイバーの隊長同士ぐらいの距離感なら分かるが、ちょいと盛りすぎかもね(原作者了承とはいえ)。

 ともあれ、不思議な魅力がある作品に思う。結構テキスト量も多くてなかなか進まないのだが、捨ておくには勿体ない作品である。
 作中にも出てくるが、凝ったカレーの様である。カレーはカレーの枠として安定感があるが、中身や香辛料は結構自由に設定できる。
 おっさんもたまに凝ったカレー(個性的なやつ)を作りたくなるが、本作も誰かが作ったソレというテイストである。

いいなと思ったら応援しよう!