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働く覚悟がないことを見抜かれて、嬉しかった

新卒の就活をしていたとき、お世話になっていた企業があった。気にかけてくれるおじいさんがいて、よく通っていた。面談のたびに、ほめられ、おだてられながらも選考に進むことはなかった。選考に進まないことは、見透かされている証拠のように思えた。働く覚悟がないことを見抜かれていることが、嬉しかった

逆に、企業をたくさん紹介してくれる人材紹介会社のひとには対して「このひとは、わたしのことをわかっていない」とヘソを曲げていた。

ある日、おじいさんに「そろそろ次、WEBテストを受けてみてね」と言われた。インターンの甲斐あって、わたしの心持ちも選考に前向きになっていた。テストを受けて、来週も面談をしてもらうんだとおもった。

正直テストはちょっとだるかったし、その企業の業務内容はひどく退屈なものだった。でも週に一度通うのがあたりまえで、居場所のようにおもっていたから、テストと選考を受けるんだろうとおもって席を立った。

帰り、エレベーターまで送ってくれた。「毎回大学生を送るなんてすごいな」と思いながら、お辞儀をする。

「これにて御免!意外と最後の挨拶かもね。武士みたいに、”あれが最後だったな”って挨拶は、あとから気づくんだよ」とおじいさんは言った。

「なんでそんなこと言うんですか!ありがとうございました!」


そんなわけないのに。選考してくれないってことかしら。自分がヘマをしたんじゃないかと、ちょっと不安になった。



そのあと、ほんとうに、会うことはなかった。

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以来、誰かに別れをいうとき、ときどき呼びおこされる。あの日のエレベーターからの景色と、これにて御免の衝撃。

普通の顔して
「あ、これが最後かも?」
「今後、しばらく会わないよ」
「ちょっと離れるつもりだよ」
と訴えてくるサヨナラ。


今日のサヨナラも、それだった。


周りからしたら普通のサヨナラ、でも確実に覚悟を含んだサヨナラ。なにに対する覚悟だったのだろう。わからないけれど、わたしに対する信頼のようにも思えた。

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たぶんおじいさんには、わたしが興味ないのが伝わっていたんだとおもう。おじいさんのように、未来を見ることはないけれど、いつもとちがうサヨナラを区別することができるようになってきた。

ヴォルデモートとハリーポッターの母親が戦って、ハリーポッターにヴォルデモートのチカラが乗り移ったように、わたしもおじいさんのチカラを得てしまった。

このチカラの有効な使い道を、まだわたしは知らない。ただ、今日受け取った覚悟を、応援したい。こっちだって、次に会うはさらに大きくなっていたい。


それではさようなら、これにて御免。

お返しの愛は無限大、一緒に幸せに貪欲になりましょうね!!