脱「学校」論(白井 智子 著) を読んで
脱「学校」論(白井 智子 著)を読みました。白井さんのことはひるおびで知ったのですが、本当にすごい人ですね。経歴からなんとなく想像していましたが、相当なパワー系の人だと思います。病気とかのほうが逃げ出していくようなパワー系なんじゃないでしょうか笑
本書を読もうと思った動機はシンプルに、僕も白井さんと同じことを考えているからです(選択肢を増やす・居場所を創る)。具体的には、僕は将来的に私塾をやろうと思っています。本書は僕の計画にとっても非常に良いブレインストーミングにもなりました。本当は白井さんレベルの、もっと大きな理想(小倉大学構想)があったのですが、ちょっと僕の体調的に現状難しいので、今は小さい私塾をやろうと思うことで自分を納得させています。
というわけで、ここからは備忘録です。自分の将来的な私塾のためのメモなので、書き方が乱雑なのはご容赦ください。
第一章
Stats
現時点での小中学生は約900万人で、内、学校に行けない/行きたくない子どもたちは46万人。小中学生の 3~5 %というかなり大きなパイがあります。パイが予想より大きかったことは、私塾経営を考える上で良い知見を得られました。
発達
発達障害を持つ子どもは通常学級に通う生徒の 8.8 %だそうです。僕も高校のときに ADHD と診断されましたが、それまではかなり辛い人生でした(他人に迷惑もかけまくりましたし)。また白井さん御本人とお子さんも HSP 特性があるとのことで驚きました。僕は HSP ではありませんが、小さい頃から極度の不安性で、現在は不安障害と闘っています。また僕の息子も明らかに HSP 特性を持っていると僕はみています。
「教育の目的」
「教育の目的」という答えの多い問題について白井さんは「貧困・差別・戦争のない世界を次の世界に残すこと」と書かれています。壮大な理想でありかなりマクロな視点です。そして、本気で誰も取り残さないつもりなんだなというのもヒシヒシと伝わってきました。対して僕は「教育の目的は、自立の支援である」と考えています。こちらはミクロな視点で、自分の手の届く範囲の子どもたちの自立をサポートしたいという思いから現時点ではこのように考えています。仮に小倉大学構想が実現したとしても、年間に1000人くらいが入学してくれれば御の字でしょう(現実には小さな私塾をやるのが精一杯かもしれないし、小さく始めたほうが僕も経験をつめるでしょう)。
居場所
居場所づくりという観点について、僕も全く同じことを考えています。居場所の数と自己認識にそこそこ強い正の相関があるグラフを見られたのは収穫でした。僕の経営する私塾も、そういう居場所の一つになればいいと考えています。もう一点重要なことを学びました。それは、居場所が合わなければ他に居場所を移すべきだということです。これは僕が私塾を経営することになっても肝に命じたい一文でした。僕の私塾に入塾するご家庭には「いつ辞めてもいいし、来たくなったらくればいい」を徹底して説明しようと思います。
完璧な学校
ここにお願いしておけば問題ない!というような学校は存在しないという結論に至った、という白井さんを信じようと思います。僕も最近息子の学校の乱暴な子どもたちにやられて帰って来る息子をみて、「転校も視野かなぁ」なんて思っていましたが、最近それはちょっと違う気がしていまして、先日は担任の先生に「どうやったら学校が良くなるか、一緒に考えましょう」なんて偉そうなことを言ってしまいました。主旨は白井さんと一緒で、どうやったら互いを尊重し尊敬しあえる考え方が身につくかという意味でそう言ったのです。ところで、これは肌感なのですが、白井さんの娘さんは「どこも合わないからママが作ってよ」と言ったそうですが、白井さんの娘さんはママが理想郷を作ったとしても「合わない」と言うのではないかという気がしました(ここは白井さんに要確認。例え居場所が10個あったとしても、シンデレラフィットするような環境というのは、瞬間的にはあるかもしれないが、常時理想郷というのはかなり難しいと感じました)。というのは、アドラー心理学でいうところの「全ての悩みは人間関係の悩みである」という点を思い出したからです。娘さんがどういう人間関係の中にいるのかわかりませんが、この点において最も重要なのは教育にあたる人材の採用だと言えるかと思います(Google の Hiring の哲学と似ていますね)。
第二章
白井さんの経験
まぁ人間ですから人生違うところが多いはずですが、活動の動機は僕の体験と似ているところもありました。白井さんが松下政経塾で福祉に興味を持たれたのに対し、僕は新卒の時点で教育をやるぞと決めて、学習塾に就職していました。白井さんの動機が、「自身が感じた違和感」から生まれたものだとすると、僕の動機は「僕みたいにいじめられている子どもたちをなんとか救ってやりたい」というわりかし明確なものでした。これは、僕が小中とかなり辛い子供時代を送った経験からです。白井さんとは対象的に、僕は高校入学とともに「僕をいじめたりバカにした奴らへの復讐」を決め込み、とにかく悪い方へ悪い方へ進みました。高校の最初の一ヶ月は東大志望でしたが、悪い方へ進むうちにそんな気もなくなり、結局高校は出席日数が足りず中退しました(実際は通信制に転校することで、留年を回避しただけ)。
1999年当時の子どもたちと占いの館
白井さんはとにかく傷ついた子どもたちの話を聞き、肯定するというアクションをとられたようですね。僕も完全に同意です、というか、否定する人は最近はもう淘汰されていると信じたい笑。ところでこの点について、僕にはあるプランがあります。小倉塾では、傷ついた子どもたちの自立支援をするつもりですが、僕は話を聞いたあとのアクションをかなり decisive に行こうと考えています。ネットがあるとはいえ、元 Google のコンサルが具体的なアクション アイテムを提示できるというのは僕の強みでもあります。というわけで、一旦話を聞いたなら、夢でも悩みでも、具体的なアクションに落とし込みたいと考えています(夢が変わればまた考えればいいし、悩みが解決すれば他のことをすればいいし)。
「どういう子を育てたいのですか?」
白井さんは子どもたち一人ひとりの個性・特性を大切にする方です。そして、得意や才能を伸ばす環境を創ることが肝要だと書かれています。僕も全く同意見ですが、僕が考えるもう一つの方法というのがあります。それは「圧倒的な力を与えること」です。フリースクールを出た子どもたちがどんなに多様性を理解し、素晴らしい人格者になったとしても、通常学級を卒業し、他者を攻撃することで生きてきた人は大勢います。これは白井さんの考える、誰も取り残されない、とは別の世界の話です。少なくとも昭和生まれが全員死ぬまで、この社会全体を変えることは難しいでしょう。であれば、僕はこの子達に圧倒的な力を持つことで、自分を守ってもらいたいと考えています。具体的には、英語・数学・コンピューターサイエンス・筋肉のどれか一つを極めることで、少なくとも自分を守ることができると思います。そこに多様性や相手の気持ちを理解する能力が備われば、もう誰にも攻撃されることもなく、敵のほうから逃げていくでしょう。それだけではなく、ドリームプラネットの卒業生の皆様のように、多種多様な職業に就かれたとしても、英語・数学・コンピューターサイエンス・筋肉のどれかは必ず武器になります。第二章の次にあるコラムで、卒業生が学力や学歴に触れましたが、この日本のシステムにも英語・数学・コンピューターサイエンス・筋肉があればいかようにも対応することができます。
第三章 5つの提案
偏りが強みになる
白井さんは個人を尊重し、特性を尊敬する方ですから、どのような偏りを伸ばすかというのは自由だと言うのが白井さんの考え方です。僕も全く同意です。ただし、一つ前のパラグラフに書いたように、僕はその偏った誰にも負けない何かが特に見つからない場合は、英語・数学・コンピューターサイエンス・筋肉のどれかを意図的に偏らせることをオススメしようと思います(2025年現在時点ではこれらが有利であるため。将来的には変わるかも。)。もちろん、僕もそんな天才的な絵を見せられたら、そちらを伸ばせるような環境作りに徹するでしょう。
余談: 褒める事の難しさ。チャームを褒める、才能を褒める、など、白井さんは基本的に褒める教育をなさっています。実際、世界の9割の先生方がそうでしょう。白井さんのここまでのお話はアドラー心理学に通じる点がとても多いのですが、この、褒めるという点だけがアドラー心理学に矛盾します。アドラー心理学では褒めることをしません。というわけで、この点については白井さんに要確認。
ホームスクーリングのデメリット
これは盲点でした。やはり僕の私塾も、理想は寮生活や、一緒にランチをすべきなんだなと再認識させられました。予防医学と食育は僕の私塾のウリの一つですから、しっかりと料理の基礎からウチの妻が教えてくれるでしょう。
放課後格差と支援員の苦悩
これはどちらもヒシヒシと感じます。格差の方については保護者の可処分所得と時間的余裕の話なので一旦置いておくとして…、支援員の苦悩は毎日お迎えに行く度に思います。僕の息子は NPO が運営する、学校に併設された学童に通っていますが、とにかくてんやわんやです笑。みんな知ってる暴力問題児が2名いて、支援員が手を焼く、保護者に伝える、そして何も変わらない。ここで白井さんのようなスクールの出番だなぁと思いました。少なくとも、我々保護者も支援員も、この数名の子たちには何か特別な支援が必要だなと感じているのに、叱る・保護者への報告、以外に手のうちようがないというのが現状のようです。白井さんが立ち上げたような学童があれば、この数名の子たちを預けてみる選択肢がとれるんだけどなぁ。
第四章
格差
「人は、平等ではない」というのはアニメで良く言われるフレーズですが、白井さんは本気で教育への選択肢とアクセスの格差を無くすつもりなんだということがわかりました。ここは国策でやるべきところですが、まぁそう上手くはいかないのが今の国政の現実です(白井さんがこども家庭庁、厚労省、文科省とどういう関係を築いていらっしゃるのかわかりませんので、ここはこれ以上コメントしません)。とにかく、様々なプロジェクトを立ち上げ、究極的には誰も取り残されない日本を創るのが白井さんの使命なんだなということがわかりました。そこをお手伝いできたらなぁと思いましたが、僕は政府渉外は好きだけど、性格的に向いていないのがわかっているので、「アクター」の一人として白井さんを応援できたらなと思いました。
Study in America
ここで述べられている stats については僕も知っていました。理由は様々でしょうが、とにかく養護施設育ちの子たちの大学・専門進学率が低い。流石白井さん、もうとっくに子どもたちをどんどん留学させているんですね。この取り組みにはもう首がもげるほど賛同します。とりあえず行ってみるってのは大事なことです。恐らくそういう発想すら与えられない環境で育った子たちにアプローチしていく必要は今後どんどん高まると思います。このブログの冒頭に書いた小倉大学構想では、養護施設育ちの子たちに特別枠を設けるつもりでした。現状の学力や資金はどうあれ、やりたい事があって勉強する気があるなら、こっちも全力支援する用意がありますよ、という僕の意思表示です。これ実現できないかなぁ〜と今本気で思い始めました。
特別対談
もう一点、僕がアクターとして社会の力になれるとすれば、安宅先生との対談で、安宅先生が学校教育の2つ目の課題の中で挙げていた、問題解決能力です。安宅先生は元コンサルですし、僕もコンサルですから、Problem Solving は基本中の基本になります。僕が私塾や大学をやる事になったら、全ての生徒さん達に Problem Solving を学んでもらい、世界で活躍できる人材に育ってもらえたら嬉しいと常々考えています。
僕の感想
久しぶりにメモを取りながら本を読みました。今僕は病気でなかなか自由が効かない現状ですが、将来に向けて色々とブレインストーミングができました。今率直に思っているのは、国策としてのゼロベース革命の方は白井さんと安宅先生にお任せして、自分はプレイヤーとしてできることをやろうと感じています。僕は白井さんほど優しくないし、安宅先生ほど賢くもないので、方法論はやや違うかもしれませんが、向いている方向は同じです。いずれ機会があれば白井さんにお会いしてお話がしたいです。
ところで最後に白井さんに提案なのですが:本書は基本的に教育者や保護者向けに書かれていますが、この本は子どもたちにこそ読まれるべきだと思いました。というのは、親ガチャや格差のせいで、子どもたちが、今自分の周りにある選択肢を認識していない可能性が高いという点が気になったからです。小学校低学年には難しい内容かもしれませんが、高学年以上・中学生なら読めると思います。そこで、今を苦しむ子どもたちが、今ある選択肢を知れば、自分から親に働きかける行動を起こせる子どもたちがかなりの数いるのではないかと思いました。僕自身、人生を変えた一冊と出会うまで、アメリカの教育とビジネスの凄さを知りませんでした。というわけで、この本、無償で46万人の子どもたちに配布しませんか?e-books ならコストもほとんどかからずに実現できると思いますし、Google Play Books や LINEヤフーも公開に協力してくれると思います。結果、フリースクールがパンクするかもしれませんが、そこはみんなでなんとかしましょう。笑
以上、素晴らしい本と、取り組みを、ありがとうございました。