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Netflixはエンターテイメントの王者となり得る。その凄さをまとめました。

こんにちは!メルカリでPMをしているKonosuke Nakajimaです。
Netflixが好きでほぼ毎日観ているのですが、好きすぎてどんどん調べていくうちに、これは..Netflixは世界中のエンターテイメントの王者となり得るな..と思い、その凄さをまとめようと筆を取りました。

想定読者はテクノロジー企業やエンターテイメントのプロダクトに興味がある方や、Netflix凄いって聞くけど実際どうなの?という方です。
(当方Netflix社とは全く関係ありません笑)

▼Netflix(ネットフリックス)とは

"テラスハウス"や"全裸監督"など、日本でも最近話題となることが多いNetflix。1997年に創業したこの企業は、今や世界190カ国、1億5,100万人以上の人々に利用されている動画配信サービスを展開しています。

今やFacebookやAmazon,Apple,Googleなどと並ぶ「FAANG」の一つとして、世界に名だたる巨大テクノロジー企業の仲間入りをしています。

時価総額は2019/9時点で14兆円、株価はここ10年で50倍に成長しています。

時価総額と株価

日本ではすでに有料会員数が300万人を突破しており、YoYで+77%の成長をしているとのこと。(65%以上は1つのアカウントで複数人見ているとのデータもあるので視聴のユニークユーザーは500万人以上)


作品の多くはユーザーそれぞれの母国語で観られる「多言語対応」を実現しており、例えば"全裸監督"は日本語以外に28ヶ国語に対応しています。

全裸監督


▼ユーザーの心を掴む"レコメンド"と"パーソナライゼーション"

ユーザーに使い続けてもらうために、Netflixはレコメンドにかなり力を入れています。アプリを開いて一番上に出てきたり、Netflixで人気の作品!と伝えてくるアレです。(社員の40%以上がレコメンド改善チームだという噂も)
過去には186カ国から4万チームが参加して賞金1億円をかけたNetflix Prizeというアルゴリズム・コンテストも過去に開催しています。

レコメンドエンジンはユーザーの好みを的確に捉え、世界中で毎日1億時間以上再生される作品の80%以上は、検索ではなくレコメンド経由で選択されています。

レコメンド


これらのレコメンドは、世界1億5,100万人以上分の、視聴した作品や視聴時間、視聴した日時、いつポーズし、巻き戻し、早送りしたのか、利用したデバイス、検索やページのスクロールの様子などをトラッキング作成されています。

続いて"パーソナライゼーション"。実は、作品の配置だけでなく、表示されるサムネイル画像もユーザーに合わせてカスタマイズしているんです。

ストレンジャー・シングス


例えば、「恋愛系の作品」が好きな人には「恋愛系の作品であることがわかるカップルシーンを強調したサムネイル画像」を見せたり、「コメディ系の作品」が好きな人には「コメディアンで有名な俳優であるRobin Williams」をサムネイル画像に含めるなど行っています。

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また、好きな女優や俳優がよく出ている作品を観ている人には、同じ作品でも自分が好きな女優や俳優が全面に押し出されたサムネイル画像を作成し、表示しています。(主役だからサムネイル画像になるわけではない、ということですね)

女優


確かにはじめは観るつもりではなかった作品も、サムネイル画像が変わると面白そうだな、とつい観たくなることがありました。ブランド価値向上のために、いかにCTRを上げるかという点に余念がありません。

このパーソナライゼーションを実現しているのは、Netflixでは公開年や出演者だけでなく、作品の内容にもとづく独自のタグ付けが行われているからなんです。


例えば、恋愛関係が出てくる作品でも「doomed love(悲恋)」「unrequited love(報われぬ恋)」「first love(初恋)」など、描かれている恋愛関係のジャンルにもとづき細かく分類されます。これらはNetflix Taggerと呼ばれる人たちによって人力で行われています。彼らは数十ページに及ぶマニュアルを見て、トレーニングを受けてから行うとのこと(競合他社でもここまでやっている企業はないそうです)。これによりハイクオリティのレコメンドやパーソナライゼーションが実現できているのです。

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この人力でタグ付けができるのはNetflixの作品が、およそ1万番組以下だと言われているからです。(彼らは番組数を公表していませんが。)

アマゾンのカタログには何百万という商品が並びます。そのため、こうした人の手によるタグ付けは、アマゾンではほぼ不可能です。作品数が多くなってくると今後はレコメンドやパーソナライズの方法も変わってくるかもしれません。



▼エンタメ業界に革新をもたらした"ビンジウォッチング"

Netflixがエンターテイメント業界に革新をもたらした一つに"ビンジウォッチング"(イッキ見)があります。これは、これまでドラマは毎週1話ずつ放送(公開)していたものを、1話から最終話まで一気に公開をするというもの。


観たい作品を一気に見ることができてしまうので、Netflixのような毎月課金するサービスだと、観終わった後にすぐ解約すればNetflixの売上にならないのでは?という疑問が生まれます。しかし、1話見て続きが気になり、2話、3話と一気に作品を観る。もしまだ解約までに時間があれば他の作品も観てみる。そしてまた次と。そうすると、どんどんNetflixというサービスをユーザーは好きになり、Netflixのブランド価値が高まり、使い続けてくれるんです。(これにより毎週1話ずつのテレビは待ちきれなくなりました..)

2017年には840万人以上の人々が24h以内に1シーズンをすべて観ているというデータも。

ビンジウォッチング

24h以内に1シーズンすべてを観ることを"ビンジレーシング"と言います。ビンジレーシングをしているユーザーはこの5年で20倍に増えています。

ビンジレーシング


▼ストレスのない視聴を実現する映像配信技術

Netflixは映像配信技術にも注力してきました。
現在製作されているオリジナル作品のほとんどは6K(ウルトラHDの2倍以上)で撮影され、配信するデータ量もどんどん増えています。

またDynamic Optimizerと呼ばれるエンコーディング技術により、例えば1GBのデータで可能なNetflixの視聴時間は、2015年以前は1.5時間でしたが、2019年現在では6.5時間と増加しています。

映像配信技術


Netflixのインフラの改善に対する努力が伺えます。

またエンコーディング技術だけでなく、"ネットワーク品質のパーソナライズ”も行っています。各ユーザーのネットワーク状況はリアルタイムでトラッキングされ、デバイスやロケーション(例えば地下鉄の中にいるとき)、再生までにかかった時間、バッファー処理が中断された回数などを分析し、配信する映像の品質をリアルタイムで高画質にしたり、低画質にしたりと調整しています

画質を変更


また、ユーザーの視聴履歴や行動データから次に観る作品を予測し、一部をあらかじめキャッシュする「Predictive Caching」という機能も。これにより再生までにかかる時間は大幅に削減されたそうです。

再生短縮


▼新たなエンタメの形を創出する"インタラクティブショー"

Netflixはエンタメ業界初の試みとして、インタラクティブショーを行っています。これは配信された作品を視聴していると、ゲームのように選択肢が画面に提示され、その「答え」によってストーリー展開が変わるというものです。

これまでの動画配信は常に一方通行だったものが、インタラクティブなエンターテイメントになる全く初の試みを行ったわけですが、実際にやってみると、なんと90%もの人々が「選択しながら」見ているそうです。そして多くの人々が、選択した内容についてソーシャルメディアなどで話しています。
ファンの間ではどのようなストーリーのパターンがあるのか独自に分岐図を作って楽しんでいたり。

シーケンス図

確かに自分が選ばなかった方のストーリーがどうだったのかは気になりますよね。

選択肢の組み合わせが数え切れないほどあり、結末が複数存在する作品の提供は今後のエンターテイメント業界を大きく変えうるのか、それともそれだけたくさんのパターンを撮影するわけで、コストが合わずに辞めるのか。動向に注目していきたいです。

▼凄さをより実感するNetflixの決算

決算からも、この企業がエンターテイメントの王者に到達しようとしていることが分かります。
有料会員数はすでに海外が国内を追い抜いている状態。国内で投資し続けてきた作品は、海を超え、世界中の人々に愛されています。

有料会員


国内の成長は鈍化しているものの、1億人弱というこの数値はアメリカ人の5人に1人がNetflixを契約してることを表します。(すでにアメリカの半数の世帯がNetflixを見られる環境にあります)


また、Netflixは基本的に有料会員数が売上に繋がるので、売上でもすでに海外が国内を上回っている状況です。4半期売上がすでに5,000億円を超えているのは凄すぎますね..

売上比率


エンターテイメントの中でも、動画という商材は世界に展開しやすく、価値を届けやすいのだと思います。(これまでのアメリカ国内での投資は日本や海外への投資ともなり得ているなと。)


ARPU(1ユーザーあたりの売上)も国内は増加。月額費を値上げするとARPUは上がりますが、有料会員数は減少してしまうので、値上げのバランスやタイミングは難しそうです。

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海外はインドが月額300円ほどで提供しているのでそれにより減少しています。


一方でキャッシュフローについてです。
作品に投資し続けているフェーズなので、営業利益は700億円ほどでていますが、営業キャッシュフローは540億円のマイナスです。作品には2018年には1.3兆円投資し、2019年には1.6兆円投資するとのことです。日本国内はもちろん、海外の動画配信サービスをも大きく上回る投資を行っています。(足りない資金はがんがん社債を発行しているという状況です)


2017年時点で、競合他社よりも多く投資をしていることが分かりましたが、2018,2019年とどんどん作品への投資が加速していっていますね。

投資額

少し古い数値ですが、vertoによると、MAUは約6,100万人。1アクティブユーザーあたりの月間視聴時間は約6時間というとてつもない数値です。画像1



▼急成長を支えるNetflixの人事戦略と文化創造

数々のプロダクト改善やエンターテイメントに革新をもたらす試み、圧倒的な成長率で積み上げる有料会員数などは、Netflixという企業の組織構造、そしてその中にいる社員によって形成されています。

フェイスブックCOOのシェリル・サンドバーグが絶賛した、"Netflixの人事戦略と文化創造"も、エンターテイメントの王者となり得る要因の一つだと思います。

こちらについての詳細は、iwacciiiさんのnoteに詳しくまとめられています。


▼エンターテイメントの王者になると思った一番の理由

さいごに。これまで数々のNetflixの凄さについて書いてきましたが、エンターテイメントの王者になり得ると思った一番の理由は別にあります。それは、広告主に囚われず「面白い作品を創り続ける」という点だけでなく、
「未来を予測する力と変化できる組織力である」と思います。

元々はオンラインDVDレンタル市場で"王者"だったNetflixは、DVDレンタル市場が100年も続くことはないと、自らの売上を減らしてまでも、延滞料金の一切かからない月額約1,000円で何本でも映画が観れる動画配信サービスへと転換しました。

来たるべき未来を予測し、これだけの大転換を実現した企業は世界でもないと思います。きっともし次に動画配信サービス以外のエンターテイメントの時代が来たとしても、Netflixはうまく変化し、王者になるんじゃないかなと思うんです。


一つの例として、最近話題の"全裸監督"は今の時代にふさわしい作品としてSNS等で声を聞きますが、制作の開始は2年半前なんですね。2年半前には今の時代がこのような作品を求めていると予測していたのでしょうか。


時代を捉えた作品、圧倒的な才能を持つ方々によって創られた作品は、感動を生み、人々のコミュニケーションを生む。
そして、価値観を変え、行動を変えていく。
まず何より、どんな面白い作品があるのかな?と毎回ワクワクする。





赤いNの文字がカラフルな光の筋に変わる



他にも色々と凄いところはありましたが今日はこの辺りで🙏。

▼参照
When is Binge Watching a Guilty Pleasure, or a Problem?
Ready, Set, Binge: More Than 8 Million Viewers 'Binge Race' Their Favorite Series
This is how Netflix's top-secret recommendation system works
Artwork Personalization at Netflix
How I Got My Dream Job Of Getting Paid To Watch Netflix
How Netflix Reverse-Engineered Hollywood
Netflix’s real advantage is that it’s a tech company first
Dynamic optimizer — a perceptual video encoding optimization framework
Using Machine Learning to Improve Streaming Quality at Netflix
Netflix Gambles on Big Data to Become the HBO of Streaming
Data Can Enhance Creative Projects — Just Look at Netflix
視聴者の選択で物語が変化? Netflixが賭ける「インタラクティブショー」とは
日本参入4年。“最高のホームエンターテイメント体験”を実現するために、Netflixがしていること
全裸監督


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