【米栗カレンダ 20200617】君だけのお守り
ジープがどろのなかをはしるのよ。
(彼が静かに、姿勢正しく椅子に座っている時。
それはタブレットで、ジープの動画を観ている時。
ジープはおもちゃのラジコンカーで、雪の中を、泥道を、濁った川を疾走していく。その様は本物さながらに力強い。
彼は今、そのワイルドなドライブに夢中なのだ。
それを観ている間だけは無言。おしゃべり男子の彼が、3分以上黙る時があるとしたら、ジープの映像か、『大きな古時計』の童謡アニメを観ている時に限られる。
ひとがなにかに強烈に興味を持つ理由って何なのだろう。
自分は小学校に入ってすぐに幽霊や妖怪の本にはまりこみ、異界の物語は未だに自分のこころの癒しになっている。
友人の娘さんは幼稚園の時にバレエを自主的に習い始め、大学生の今でもダンスが好きなのだという。
「好き」という気持ちは、性別や生育環境よりも、生まれ持ってきた「お守り」のようなものかもしれない。それがあれば、生きていける……というような。
好きな気持ちって、たとえそれが妖怪であろうがジープであろうが、大事にしていくべきものなんだろうな、と思ったのでした。)
取材、執筆のためにつかわせていただきます。