2階からポップコーン【weekly 米栗カレンダ 20201027】
■早すぎる、がちょうどいい
砂場にて。せっせとトラックに砂を積んで遊んでいたかと思ったら、ふいにごろんとうつ伏せになって「ねてるの〜」と宣言した3歳の彼。
思い立ったらすぐに走るし、思い立ったらすぐに寝てみる。
これほどに感情と行動が連携できていたらきっと、病まずに生きていけるだろう。
周りを見すぎて身動きが取れなくなっている自分を思う時、いつも思い出すのは、京都・東山の永観堂のみかえり阿弥陀様だ。
この阿弥陀様は、後ろを振り返るという珍しいお姿をしているのだが、それにはわけがある。ある日、行をしていた僧侶・永観の前に阿弥陀様が現れ、永観を先導し、そして後ろからくる彼を振り返るなり、「永観、おそし」と声をかけたという。
そう、たぶん大人という大人の、行動という行動のほとんどは「おそい」のだ。考えるは大切なことだけれど、行動も等しく大切なのだと思う。
■どこ?
夜半。
眠っていた子がふと目覚め、起き上がって「ママ?ママは?」とオヤを探す。
ここだよ〜と顔を近づけたら、ふっと笑って、
「どこに行っちゃったかとおもったよ。」
とつぶやくように言い、そしてまたすうすうと寝始めた。
このひとに、ここだよ〜と、あと何度言えるのだろう。
きっともう少ししたら、近くにいるだけで「なんでそこにいるの?」なんて鬱陶しがられるんだろうなあ。それもまた、楽しみではあるんだけど。
■2階からポップコーン
日曜日、父と息子は庭に球根を植え、花の種を蒔いていた。
そこに、お二階のMさんから声がかかった。
「おーい、ちょっと受け取ってよ。」
と、紐にくくられたビニール袋が降りてきた。最初はびっくりしていた3歳男子は、袋を開けてみて笑顔になった。中には外国製のポップコーンが入っていた。
お2階のMさんは、きっとチビが庭に出てくるのを待っていてくれたのだ。
うちの玄関チャイムを鳴らして「お菓子をどうぞ」と手渡すよりも、2階からロープで降ろしたほうが子供には何倍も楽しい。おまけに、親も「まあお気遣いありがとうございます。」なんて社交辞令をしなくてすむ。2階のベランダを見上げて「ありがとうございます!」と言い、Mさんもニコッとして「じゃあね!」と顔を引っ込めて終わり。
ご近所つきあいは、軽いに限るなあ…なんてことを、2階のMさんに教えてもらったのでした。
ちなみにうちのチビは、ポップコーンだとわかるとすぐにMさんに、
「ポッポクーンは(ポップコーンがうまく発音できない)、とうもろこしでつくるんだよ。」
と、ありったけの知識を披露していた。彼の愛読書『のらねこぐんだん きしゃぽっぽ』という絵本に大量のポップコーンが出てくるので知っていたのだ。
■今週のできごと■
掃除機がまったくゴミを吸わなくなった。
ある日突然「ごめん、もう気力なくってさ。このアリンコくらいのシュレッダーのカスも吸いたくないんだよね、ほんとごめん。」という感じで、髪の毛一本も吸ってくれない。モーターの音だけはするから、最初はまだいけると思ったけれど、吸引口にほこりを置いてみても吸い込まれていく気配がない。
そういう時って、突然来るんだよね…と人間相手のように掃除機に共感してしまった。今までごく自然にできていたことが、突然できなくなる日が、隕石が降ってくるように予兆無く来るのだ。
だから、さようなら。新しい子を買ってきた。今度の掃除機はコードレスだけど重い…が、3歳児は楽しげに、
「これからのおそうじは、おいらにお任せだ〜」と歌いながら掃除してくている。助かるなあ。
それではまた来週。
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