言葉にすると
体の奥深くにしまいこまれた、記憶の塊、後悔、痛み、怒り、涙。それはいつもそこにあった。あなたはいつでも戻って行って、同じ苦しみを味わうことができた。あなたは、その記憶が失われることを恐れ、外に溢れ出すことも恐れていた。
ところが言葉にしてみると、その塊は、拍子抜けするくらいの容易さで、大空に飛んでいった。あなたはその呪縛から解放される。それはもはや、隠しておくべき、忌むべきものではなく、覚えておくべきものでさえもない。それはただの、過去に起こった出来事。そこに、あなたはもういない。
手放した途端、あなたの一部だと思っていた塊は、あなたと一体ではなくなった。そこに、付け加えるものも、差し引くものもなくなった。それは喜ぶべきものでも、悲しむべきものでもなくなった。
そしてあなたは、今を生きる。新しい言葉とともに。
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