チョコレートとスノーフレーク【バレンタイン】
『放課後、第2グランドまで来て』
授業中、小さくちぎった紙に書いたそれを、
先生にバレないように隣の席の彼に渡す。
ノートの端が切れているのを、
誰にも見られないようにサッと手で隠す。
友達と手紙を回して遊ぶことはよくあるけど、
(いや全然よくあっちゃだめだけど……!)
その時の緊張感とは、全くの別物。
今日は朝からずっとドキドキしてた。
6時間目までチョコ隠したり、まわりに悟られないようにしたり。
どうしても彼の表情が気になって、
そっと隣に目をやる。
紙を見るなり小さく微笑む彼に、
ほんの少し、緊張の糸が緩む。
その笑顔に、今までどれだけ魅せられただろう。
𑁍 𑁍 𑁍
終業のチャイムが鳴る。
ここから。
ここからなんだ。
本当に緊張する時間が始まるのは。
少し離れたグラウンドまでの道は、
慣れているはずなのに、
まるで初めて歩くかのような感覚がする。
彼を待つ時間が、永遠のように感じられる。
なんて言おう。
どんな言葉で伝えよう。
受け取ってくれるかな。
喜んでくれるかな。
脳はもう、とっくに彼のことでいっぱいになっていた。
彼の自転車がこっちに向かってくるのが見える。
頑張ろう。
「あの時、勇気出してくれてありがとう」
そう未来の自分に言ってもらえるように。
『ずっと、好きでした。』