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映画「浅田家!」~あたり前のあしたはない


幼いころ、写真好きの父からカメラを譲ってもらった政志(二宮和也)は、昔から写真を撮るのが大好きだった。そんな彼が、家族全員を巻き込んで、消防士、レーサー、ヒーロー、大食い選手権……。それぞれが“なりたかった職業”“やってみたかったこと”をテーマにコスプレし、その姿を撮影したユニークすぎる《家族写真》が、なんと写真界の芥川賞・木村伊兵衛写真賞を受賞! 受賞をきっかけに日本中の家族から撮影依頼を受け、写真家としてようやく軌道に乗り始めたとき、東日本大震災が起こる―― 。
かつて撮影した家族の安否を確かめるために向かった被災地で、政志が目にしたのは、家族や家を失った人々の姿だった。(公式HPより)

しばらく前から映画館では予告が流れていたので、大体の雰囲気はわかっていた。
家族、震災、泣かせる題材。
冒頭から父親の死。
典型的なお涙ちょうだい映画?
でもどうせ映画を観るなら泣けた方がスッキリするわとおもっていたら・・・
まさかの家族を巻き込んでのコスプレ!
風吹ジュンさんの振り切ったあっけらかんとした表情がとてもいい。
家族を束ねる太陽的な母親。娘を持つ母じゃないな。
男の子2人の母で、家族の中の紅一点という感じ。

堅物そうなお兄ちゃんも、頼りなさげなお父さんも
末っ子がかわいくて仕方なくて、コスプレ家族写真に付き合っているんだろうな。
でも本人たちも楽しんでいて、結局はDNAってことか。

下積みの時代もありつつ、ちゃんと成功を収めて、幸せ物語。
映画はやっぱりこんなのがいい。

その一方で政志が撮る家族には死の影がつきまとう家族が多い。
娘を亡くした父、父親を亡くした娘、息子を亡くした夫婦。

家族写真は生きる現在を残すために撮る。
幸せな笑顔の日々を残すことが多い。
その一方でその幸せな時間のあとにはさまざまなことが待ち受けている。

震災。
当たり前に来ると思っていた明日が来ない。
自分自身も経験したことがある現実。
でも家族を突然亡くした経験はないから、
すべてを理解できるわけではない。
それでも、子どもを亡くす親のシーンではやはり泣いてしまった。
自分も親なだけにもうこういうのは嫌。

昔自分が子どもだった頃、母が子供を亡くすドラマは嫌いと言っていた気持ちが
自分が親となってやっとわかった気がする。

それにしても二宮くんの切ない表情とか泣きの演技ってやっぱりいいな。
別に嵐のファンではないけど、演者さんとして二宮くんは好き。

そして後半に突然出てきた菅田将暉さん。
予告では「ここにも菅田将暉出てるんや~」って思っていたのに、
物語に引き込まれてすっかり忘れてた。

影が薄そうなのに、存在感のある人。
写真の泥を落として家族に返す活動は実際にあって、
新聞記事でも何度も読んだ。
でも実際に映像で見ると、
あの混乱した衣食住といった基本的な生活すら満たされない中で、
写真を返そうとした思いってすごいな。

阪神大震災のときは、家はつぶれてしまっても流されてはいないから、
思い出のものを取り出すことができる可能性はあった。
でも東北はすべてが流されてしまって、何も残っていない。

どちらが大変かなんて比べられるものでは決してないけれど、
思い出が残らないのはつらい。
人の記憶なんて儚いから、目に見えるものがないと、薄れていってしまう。
それを少しでも取り戻そうとした人の強さに存在感がないわけがなかった。

でも一番好きだったのは最後の本物の浅田家の家族写真だったかも。

「感動の実話」ってフレーズで、震災のシーンもある予告だったから、
てっきり震災で写真を返すところがメインかと思っていたのに、
まさかのコスプレ家族写真こそが実話だったとは。
何も予習していないと、こういうドッキリがある。

こんな魅力的な家族が実在するのかと思うと、なんだか心が温かくなった。
家族を亡くしたことを主体としたシーンも多いから、
暗くなるかと思うけど、この映画に暗さはない。
なんだろうなぁ・・・
子どもを亡くすなんて、この世の終わりなくらいの悲劇だと思うのだけど、
なにか希望があるというか、なんというか。

結局人は、何があっても生きていかなければならないってことなのかな。

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