映画「宇宙でいちばんあかるい屋根」～しぶとく生きる

お隣の大学生・亨（伊藤健太郎）に恋する14歳の少女・つばめ（清原果耶）。優しく支えてくれる父（吉岡秀隆）と、明るく包み込んでくれる育ての母（坂井真紀）。もうすぐ2人の間に赤ちゃんが生まれるのだ。幸せそうな両親の姿はつばめの心をチクチクと刺していた。しかも、学校は元カレの笹川（醍醐虎汰朗）との悪い噂でもちきりで、なんだか居心地が悪い。つばめは書道教室の屋上でひとり過ごす時間が好きだった。ところがある夜、唯一の憩いの場に闖入者が――。空を見上げたつばめの目に飛び込んできたのは、星空を舞う老婆の姿！？ 派手な装いの老婆・星ばあ（桃井かおり）はキックボードを乗り回しながら、「年くったらなんだってできるようになるんだ――」とはしゃいでいる。最初は自由気ままな星ばあが苦手だったのに、つばめはいつしか悩みを打ち明けるようになっていた。
（公式HPより）

両親との関係にチクチクとした気持ちを抱える中学生つばめの前に
突然現れた星ばぁ。
真面目で融通のきかないタイプのつばめには屋上でキックスケータの練習をする老婆は完全に許容範囲外。
でも星ばぁの語る言葉の数々につばめは少しずつ心を開いていく。

たった２時間の映画の中に
・父親の再婚相手の母に子供が生まれることを素直に喜べない
　自分が嫌いな女の子。
・悪い男に引っかかって家に帰ってこない姉を心配する弟。
・自分の夢を追って家族から離れてしまった母親。
・隣のお兄さんに純粋に片思いする中学生女子。
・親友のふりをして嫉妬にかられて裏では嫌がらせをするクラスメイト。
・理由はわからないけど家族を捨ててしまった母親。
・好きだけど振られてしまいどう接していいかわからず意地悪をする
　中学生男子。
・血のつながらない娘に愛情を注ぎ見守る母親。
・思春期の娘との接し方に迷う父親。

設定てんこ盛り。

でもこれがすべてちゃんと一つの物語になっている。
見事だなと。
家族を描く象徴としての屋根とその屋根の意味を教えてくれた星ばぁが軸となってまとまっていっている。
星ばぁは
「年食ったらな、なんだってできるようになるんだよ」
とはしゃぐけど、きっと長い人生を経て空から屋根を眺められるようになってわかることってあるんだろうな。

屋根は家族の象徴。
「屋根をみるところから、まずははじめなきゃなんないね。」
「屋根の下で皆で色々な時間を積み重ねて、家族になるんだろ。」
「屋根に守られているんさ、どんな家も人間も」

星ばぁは語る。でも星ばぁ自身は家族を捨ててしまった人。
旅立ちを前に娘と孫に一目会いたい思いを抱いている。
自分が大切にできなかったからこそ、屋根にこだわり家族にこだわり、
家族に悩むつばめの力になりたいと思う気持ちが伝わってきた。

つばめも星ばぁの役に立ちたいと動き成長していく。

星ばぁ語録
「しぶとく生きろ」
「家族を大事にしろ」
「時間っていうのはもっと気持ちよく使え。」
「後悔っていうのは、行動してからにしろ」
「多くの意味を勝手に期待しなさんなってこと」
「そうやってひらき直っているうちは、なんも手にはいれられん。」

こんな言葉を人生を積み上げてきた人に直接語られたら、
これで変われない中学生なんていない。

最期は別れが来てしまうのだけれども、星ばぁはつばめの中で生き続けている。
命や思いというのはそうやって永遠に受け継がれていくものなのだろう。

この美しい物語に沿うように映像も美しかった。
くらげの水槽は圧巻。山形県鶴岡市立加茂水族館らしい。
絶対に行きたい！！！って思ったけど遠いぞ・・。

あとは隣の大学生の亨くんとつばめの５年後のスピンオフが見たいな。
今は隣の小さい女の子としか見ていなくても、年齢差は５歳ほど。
突然女性として意識してしまってどぎまぎする伊藤健太郎が見たい。

星ばぁ語録を読むと、年を取ることは悪いことではないんだなと思う。怖いけど。