耳で書く歌
月に一回、小さな詩の集まりに出席する。一つの丸テーブルに向き合って座り、ひとつの題に向かって、その場で詩を書く。できた詩を回覧し、声に出して読み、互いにそれを聴く。詩そのものに対して特に批評を交わすわけではない。ゆるやかなことばの響きをともに味わって、時間を過ごす。
そこに参加するようになってあらためて気付いたのは「ことばは耳で聴くもの」だということだ。(何を今更)と思われるかもしれないが、自分はものを書く時そのことを忘れている。歌を書く時も詩を書く時も、ほぼ目で書く。無意識のうちに目で読まれることを想定している。字の持つ意味や見た目がもたらすイメージを援用しようと難しい漢字を使ってみたり、かと思えば読み手がとまどうくらい平仮名に開いてみたり、視覚偏重もいいところだ。そうして作り込んだ歌を耳で読むとしたらどうだろうか。朗詠しやすいだろうか?音の響きや調べはどうか?そもそも耳だけで、ちゃんと意味が伝わるだろうか?
耳だけで聴いて意味がわかり、なおかつ音の響きのよい歌を詠もうと思えば、ことばの選び方も書き方も自ずと変わってくるのではないか。こわばった歌に息が通るのではないか。
ここのところ、歌を書く時、ぶつぶつ声に出して読みながら、そんなことを考えている。
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