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1.よくある病名 / 日々遠点
大人になってはいけない事を知った。
なぜなら、僕が大人になった時、世界は小さな点になって消滅してしまうと、未来の僕から教えられたからだ。
もしもそうなってしまったら、僕たちは一緒に生きられない。
どちらかが消滅し、あとは一人で生きていく。
それが大人になるという事だ。
僕は混乱し閉じこもり、成長が致命に至る何かの病気にかかったらしい。
このような症状に病名があるとしたらどうだろう。
それをAIに訊いてみた。
◇刹那的救済症候群
刹那の瞬間にしか救いを見出せず、その繰り返しの中で自身を保とうとする心の病。
◇未完世界強迫症
自らの成長が世界の終焉と直結しているという思い込みに囚われ、成長を拒む心理的な強迫観念。
◇虚構哲学性発作
嘘めいた哲学的思索に囚われ、それが自己アイデンティティの核となる症状。
なるほど、どうやら確かに病気らしい。
しかも、多疾患併存であり、それなら治療は難しい。
それでも僕はこの難病と共に生きていく。
恥じることはない。
実際のところ、誰もがこの病の罹患者が好きではないか。
叫んだり、唱えたり、吹き飛ばしたり、超越したり。
悪くない。
病に軋む五感が、日々消失する遠点のドラマに、僕を同調させる。
誰も知らない瞬間の速記者として、僕の病は開花する。
それにしても、AIが回答した病名には違和感がある。
簡単に言って、これは厨二病ではないだろうか。