記事一覧
「レディ・マドンナ(幻想曲)」(『このあいだ』第36号 2023/9)
家賃はだれが工面するの?
お金は天のお恵みだって思ったかい?
貧乏を笑えるのは、貧乏を経験したことのある人か、 いままさに貧乏を経験している人ばかりだ。貧乏を知らない人が、貧乏のことを真面目な顔で「貧困」と呼ぶ。そんな風に指差されると貧乏人はそわそわする。 ブランド物は欲しいけれど、自分が「貧困」ブランドの顔になるのは落ち着かない。
貧乏人にとって「常にいまし、昔いまし、やがて来られ
「エパタ」(『このあいだ』第6号 2021/3)
目の底に堆積するような疲れに、椅子に座り込んで市販の目薬をさす。そんなとき、ああ、このまま電気のひもを引っ張るみたいにして、それっきり目が見えなくなったらどうしよう、と思う。
子どもの頃から、「盲人の目が開いた」とか「唾を吐いて作った泥を目に塗ったら見えるようになった」とか、その手の話ばかり読んできたので、逆に視力を失うという事態への対策が私にはまるでできていない。何度めかの「どうしよう」で
「ではずれますと」(『このあいだ』第5号 2021/2)
いしいももこ/ぶん、あきのふく/え『いっすんぼうし』福音館書店、1965
レベッカ・ソルニット、東辻賢治郎訳『迷うことについて』左右社、2019
保育園の先生が、娘たちのクラスみんなが昼寝をする前に、昔話をしてくれる。だからだと思う、家の絵本棚から娘が『いっすんぼうし』をリクエストしたのは。
兵庫県立美術館が秋野不矩展を開催した年だと思う。娘の生まれる数年前、たぶんその展覧会には結局行け
「公園の木々」(『このあいだ』第4号 2021/1)
「どんぐりちゃん」 が一昨年の待降説から我が家にやってくるようになった。
フェルト地のカレンダーの日付ごとにポケットがついていて、どんぐりちゃんは毎朝、 ポケットにひとつのどんぐりと小さな手紙を届けてくれる。 そのたびぼくら夫婦は大げさに騒いで子どもたちを起こし、 カレンダーのところへ誘って、どんぐりちゃんの贈り物を取り出し、手紙を読んで聞かせる。 子らはどちらも眠そうにしていて、上の子は目を
「献呈」(『このあいだ』第3号 2020/12)
ラス・カサス、染田秀藤訳『インディアスの破壊についての簡潔な報告』岩波文庫、2013
マキャヴェッリ、森川辰文訳『君主論』光文社古典新訳文庫、2017
ぼくの娘は目ざとい。 何にか。 アルチュール・ランボーの詩 「永遠」 をもじって歌えばこうなる。
また見つかった
何が一
永遠が一
人様の投げ捨てたゴミさ
保育園への登園時、 そんなに散らかった道ではないのだが、 目を凝らせば植