満月の夜まで、待ちなさい。
『まんげつのよるまで まちなさい』という絵本がある。
小さい頃、よく母に読んでもらったことを覚えている。記憶の中では、好きな絵本の一つだ。
昔、この本を母に読んでもらった幼い私が「子どもって待つことが多いのよね」と知ったふうに呟いた、という話を母から聞いたことがある。幼い私が、子どもなりに本のメッセージをとらえていたのかも、と母は言っていた。
その話を初めて聞いた当時の私は、恐らく高校生か大学生くらいで、ふうん、そんなものか、幼いなりに感想を持ったんだな、くらいにしか思わなかった。だが今、自分が子どもを持ち、泣く我が子に「ちょっと待ってね」と声をかけながらミルクを作ったり、家事を済ませたりするたびに、「そうか、子どもは『ちょっと待って』と言われる前から、ずっと待っているんだな」と思うようになった。
幼い頃の私も、家事をこなす母に「ちょっと待ってね」と言われ続けて、「子どもは待つことが多い」と覚えたばかりの言葉で感想を呟いたのかもしれない。
そう考えるようになってから、泣き喚く子の気持ちが少しわかるようになった気がする。とはいえ、なるべく待たせないようにしようと思っても、「ちょっと待って」がなくなるわけではないのだが。
今日も私は、少しの罪悪感と、ずっと待ち続ける子の気持ちを想像しながら「ちょっと待ってね」と声をかけ続ける。もう少し大きくなるまで待ったら、君にも『まんげつのよるまで まちなさい』を読んであげよう。そう、子どもは待つことが多いのだ。
まんげつのよるまでまちなさい | マーガレット・ワイズ・ブラウン,ガース・ウィリアムズ,松岡 享子 | 絵本ナビ:レビュー・通販 (ehonnavi.net)