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『ようこそ、ヒュナム洞書店へ』ファン・ボルム/牧野美加訳
ソウルの郊外に開店した、小さな個人書店。最初は店主の女性一人で、間もなくバリスタとしてアルバイト男性が加わります。しばらくは細々と営業していましたが、様々な試みを重ねることにより、じわじわと認知度を上げ、常連客も増えて来ます。そうした過程で、二人それぞれが抱える過去の苦い事情が明らかにされて行くのでした。
全体的に言えば穏やかでほのぼのした印象の物語なのですが、かと言って単なるめでたしめでたし的なものでもありません。
非正規雇用や社会格差、やりがい搾取、親子や夫婦の関係、書店や出版業界の置かれた状況、等々の現代の韓国が抱える様々な問題が浮き彫りになって来ますが、それは殆どそのまま日本を含む各国にも当てはまることです。こうした環境下で生きづらさを感じる登場人物たちに、私を含め多くの人々が自身を投影せざるを得ないでしょう。
世の中を少しずつ良い方向に持って行きたいと思う主人公たちの地道な活動が、商売の枠を超えて、書物を通じた文化的な活動として輪が拡がって行くのが、嬉しいところです。
ただ、やや物語がやや理想的に過ぎる美談になっているきらいはあり、現実にはこのような活動が持続する気がしないのも正直なところです。しかし、そう思ってしまっている事が既に、私自身が現代社会に飼い慣らされてしまっていることの証左なのかも知れません。
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[2024/11/23 #読書 #ようこそヒュナム洞書店へ #ファンボルム #牧野美加 #集英社 ]