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『オパールの炎』桐野夏生
1970年代、ピル解禁などを訴えて先駆的だが過激な運動を繰り拡げた後、忽然と消息を絶った女性活動家。彼女に興味を持った記者は、僅かな手掛かりを発端に、彼女の痕跡を追って関係者を訪ね歩きます。得られた証言の中から、彼女の生きた姿が次第に浮かび上がって来るのです。
実在する女性解放運動家をモデルとした物語です。それぞれの証人の語り口からは、様々な切り口から彼女の人となりが浮かび上がると同時に、それぞれの証人の人となりも垣間見られ、かつインタビューしている記者の人となりまでも伺えるのが面白いです。
彼女が主張している事は、時代を先取りしたものであって、核心部は正しいと思いますし、非常に理解できます。しかし、あんなにもエキセントリックでヒステリックなやり方に走っていては、真っ当に支持を得られる筈がないとも思います。とは言え、当時の凝り固まった男社会に真っ向から闘いを挑むには、こんなやり方を選ぶしかなかったのかも知れません。
何れにせよ、記者(の筆を借りた著者)が書いている通り、あれから半世紀も経ったのに、世の中は大して変わっておらず、前時代的な価値観に固執する人も(男女問わず)多いのが現実です。かく言う私も、自戒せねば。
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