『サンショウウオの四十九日』
切っても切れない関係にあり、常に一緒にいる双子の姉妹。それぞれの顔も性格も違うのに、双方の行動や考えていることまでが、否応なしに伝わって来てしまうのです。当然ながら姉妹は複雑な葛藤を抱えて生きていますが、それは仕方のないこと。更には、その父親と双子の伯父も、姉妹とは違ったアンバランスな依存関係にあるのでした。
特殊な境遇を土台にした突飛な話で、実際にこのようなケースがあるのかどうか分かりませんが、しかしSF的なストーリーでは一切なく、むしろ現実感が生々しい物語です。
姉妹の関係から浮かび上がって来るのは、人間の自我の意識とは何なのか、生命体とは何なのか、と言う根源的な問題です。終盤の、文字通りの致命的状況に至って、このことは更に深く読者に突き刺さって来ます。このようなテーマを扱う作品は数あれど、この小説は類を見ない斬新な設定を活用しており、そこでは医師でもある著者の強みが発揮されているのかも知れません。
一人称が姉妹のそれぞれに入れ替わるので、読んでいて頭が混乱しますが、それもこの小説の面白いところでもあります。良かれ悪しかれ、いかにも芥川賞的な作品ではありました。
[2024/09/13 #読書 #サンショウウオの四十九日 #朝比奈秋 #新潮社 ]
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