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バッハ・コレギウム・ジャパン第163回定期演奏会 ≪ミサ曲ロ短調≫

#BCJ の定演、今回は #鈴木雅明 の指揮で、J.S.バッハ: ミサ曲 ロ短調 BWV232です。

いつものカンタータ公演よりも大きめの編成で、ソプラノが合唱も独唱も2部に分かれており、トランペット3+ティンパニ、コルノ・ダ・カッチャ(ホルン)、ファゴット2を含め器楽陣も多めです。

演奏は、最高度に研ぎ澄まされたものでした。静動、緩急、明暗、清濁、悲喜、新旧、等々のコントラストが鮮やかで、耳を引き付け続けます。無味乾燥にも見えるラテン語の定型詞に、このような生気を与えた作曲家の凄さと、それを十全に表現する演奏家の凄さを、改めて感じました。

合唱の出番が多い音楽であり、BCJ合唱団はその実力を万全に発揮していました。一方で、独唱や二重唱の聴かせ所も多くあり、器楽の独奏や重奏も絡み合い、ひたすら楽しませ続けます。

独唱陣では、澄んだ軽やかさのある声の松井亜希(ソプラノ)に対し、アルト的な厚みと温かみのある声のマリアンネ・ベアーテ・キーラント(ソプラノ)は対照的。アレクサンダー・チャンス(アルト)はカウンターテナーとしては驚くべき余裕の声量の持ち主。櫻田亮(テノール)は聴く者を陶酔させる滑らかさがあり、加耒徹(バス)は剛柔の変幻ぶりが見事でした。

総じて、大袈裟ではなく今の時代を生きていて良かったと思ってしまう位の、素晴らしい演奏でした。

プログラム冊子は、やや高価ではあるものの、かなりの読み応えがありました。マルクス・ラータイによる詳細な曲目解説に加え、木村佐千子「《ミサ曲ロ短調》におけるパロディ」、大角欣矢「ドイツ語圏におけるミサ曲の系譜」の専門的な解説も付され、様々な切り口からこの特別な作品への理解を深めてくれました。また歌詞対訳では、ラテン語の単語一つ一つ毎に対し、日本語訳の文節との対応関係が番号で示されていて、言語による語順の違いをも乗り越える工夫がなされていました。至れり尽くせりです。

[2024/09/27 #演奏会 #バッハコレギウムジャパン #東京オペラシティ ]

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