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【婚活回想記】この世の終わりと最悪な婚活のはじまり①

前回のお話

ダモと私の不思議な関係が始まってから
あろうことか既に5年が経過していた。

以前彼に彼女の存在を聞いた時に
全く話にならなかったので
それ以来ははっきりと答えを出さず
ズルズルと何にも解決しないまま、先延ばしにしてきたためだ。

5年という月日はあっという間のようで、
すでに私の結婚適齢期を飲み込んでいた。

私自身30歳を超える前から、
結婚願望もしっかりと持ち合わせていたし、
この不思議な彼との関係が
何かのきっかけで「結婚」という
一般人の理解に及ぶ状況になればいいな。
なんて考えていた。

彼自身も子供が好きで
いつかは家庭を持てたらいいなとか
どんな父親になりたいだとか
そんな話も2人でしていたもんだから。

いつかきっと、そう遠くないいつか
私たちは家族になるんだろう。

そんな風に、信じていた自分もいたのだ。

そのころには彼女の存在など、もう気にならなくなってしまっていた。

これが、私の最大で最悪の失敗。

彼のあの付き合う事なんて全く重要ではない発言が
私の心のお守りになって、正常な判断をさせなかった。

だけどずっと心のどこかで
この不安定なよりどころの無い関係性は
いつか何もなかったかのように
さらさらと砂の城ように崩れる時が来る。
そんな恐怖を感じながら過ごしてきたのだ。

そして。

その時は突然やってきた。

いつも通り仕事終わりに会う約束をして
居酒屋で飲みながらたわいもない会話をする。

「今年の夏は○○へ行きたいな」

「…ん?ああ…うん」

「いつがいい?予約する?」

「…うん」

普段は遊びに行く話には積極的なのに
彼の表情はなんだか明るくなくて
何を言ってもうわの空だった。

これは絶対嫌な予感。
その時すでに女の勘が働いたのか
今日で何かが終わる。そんな気がしていた。

外に出て、少し風にあたろうとベンチに腰掛ける。

「あのさ」

「なに?」

もう何を言われても、普通のフリをしなくちゃ。
笑わなくちゃ。
私は心臓の音が早くなるのが分かっていた。


「彼女が妊娠したから結婚することになった」



ー続くー

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