だれかを好きになるということ-小川黎さんの『Rebirth』を読んで-
ちーばりさんこと小川黎さんの第二作目となる歌集兼写真集『Rebirth』を読んだので、感想を残しておこうと思います。
そもそも私はちーばりさん(歌集のお名前としては小川さんと呼ぶべきなのですが馴染みのある方でお呼びします)のつくる短歌がとても好きです。
なかなかご本人に気持ちを伝える機会がないのでこの場を借りてはっきりと言わせていただく。私はちーばりさんの短歌がとても好きです。
恋愛というテーマはいつも多くの人に詠まれており、私にとってもいちばん詠みたい、詠まずにはいられないものです。
恋愛短歌は、個人の感情と直結すると私は考えます(詠まれていることが虚構であったとしても)。
だからなんだか気取ったり格好つけたり、恋愛短歌というのはありのままの姿でつくることは難しいのではないかと思うのです。意図せずとも加工の施されたものになりやすい。
けれどちーばりさんのつくる恋愛短歌は違う。こちらが怯んでしまうほどに本物で、生々しくて、切実だ。
たとえるならば、標本や剥製ばかりが並ぶ博物館の中で、唐突に生き物と出会う感覚。我ながら可愛くないたとえ話ですが、ちーばりさんの短歌を目にするとき、そんな気持ちになるのです。
『Rebirth』では、そんなちーばりさんの恋愛短歌を、美しい写真とともにじっくりと楽しむことができます。
「Re」から始まる9つの章に分けられた短歌たちは、すべてひとりの女性の「きみ」への恋をうたっています。
これだけたくさんの短歌があるのに、はじめからおわりまで、一貫して淡々といるように見える。それはたぶん、その恋の行き先が喜ばしいところに行き着かないのがひとつめの章でわかってしまうからではないでしょうか。
『Rebirth』は、恋というものが、誰かを好きになるということが、どれだけ苦しく辛いものかということを思い出させてくれる。
でも、それが無駄ではないことに気付かせてくれる。
そこから生まれるものがあるのだと信じたい、すべての失恋経験者に捧げたい歌集です。
花を買う あなたなしでも美しい世界を一つずつ許すため