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嫌いな人が死んだ。


嫌いな人が死んだ。
起きたら死んでいなかった。
夢だった。
それは弟が付き合って半年で婚約した女だった。
一度挨拶して2カ月後、私達の家族旅行に一週間ついてきたその人だった。

実家に駐車している車のバンパーに下半身が犬神家の一族のように突き刺さり、同じ場所に二の腕から下の千切れた腕が乱雑に置かれていた。
なぜ、下半身の実で識別できるものがないのに彼女だと確信できたのだろう。
夢が醒めた今では不思議に思うが、夢の中の私はなんの疑いもなく彼女だと思った。
もしかしたら彼女だと“思いたかった”となると話が変わってくるが…。

とにかくその現場に居合わせた我々家族は絶句した。
しばらくその場を動けなかった。
なぜ、彼女は県外にある自分の家ではなく我が家で死んだのか。
他殺とは思えなかった。
というのも現実の世界で心当たりがあるからだ。
今回の旅行が、双方にとっていい旅行とは思えなかった。
仲が良くなったというよりは険悪になってしまった。そう感じたのは私だけではなかったと家族の話を聞いて分かった。
詳しいことは後日記載するか迷うところだが、端的に言うと嫁姑問題のようなものだ。
どの家庭に聞いてもそういう苦手になった身内は一人はいるらしいことを聞いて少しホッとした。

それを踏まえたうえで本題に戻ろう。
私は彼女を嫌ってしまった罪悪感に苛まれながら、父と一緒に遺体をどうにかしようと血まみれの両足がVの字に乗っかっている自家用車に近づいた。
するとどうだろう、よくよく見てみれば人の足だと思っていたものはマネキンのような継ぎ接ぎがあり、質感もプラスチックのようだった。
えっ、と驚くと同時に安堵した。
良かった…彼女は死んではいなかったのだ。
でも、誰だ。こんな血のりのようなものまで付けて精巧な作りで驚かせる奴は…。
マネキンの下半身を片付けながら、残った両腕も片づけた時だった。ぐにゃり。

「いや、こっちは本物か~~い」


確かに人の腕だった。思わず入れたツッコミだった。
前言撤回しなければならない、やはり彼女は死んだのだ。
さよならした罪悪感が再び、こんにちはと挨拶しながらやってきた。
彼女に嫌な思いをさせてしまったから自殺したのだろうか。
ああ、彼女に貰って読まず仕舞いの手紙を読んでおけば良かった。
もしかしたらその内容に遺言があったかもしれないのに。

ピピピッ。
そう後悔したところで目覚まし時計が鳴って今までが夢だったと知った。
それまでは本当に、本当に死んでしまったのだと思ったのだ。
だから死んでなくて良かったと思えたのだ。どんなに苦手になろうとも、彼女が生きていて良かったと思えたのだ。

私はボー…としたまま夢占いを検索した。こう書かれていた。
「自分自身の嫌いな部分やコンプレックスを克服することができることを物語る吉夢です。
そもそも死ぬ夢は、ものごとが再生復活することの暗示であり、新しいステージで活動できることの証しなのです。

ただし、相手を嫌いすぎてこんな夢を見たと考えることもできます。


嫌いな人が自分の目の前から消えればいいのに…という思いがあるのです。
その場合なら、相手の良い部分を見つめるなど視点を変えることで、嫌いという感情を上手にコントロールしてください。」

色々書いてあった。
夢でも現実でも嫌な女だ。

だるい体を起こしながら思った。
嫌いでいるのは疲れるものだ。



#note書き初め
#初夢

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