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筒井康隆『パプリカ』考察 前編

こんにちは、こねこです。
今回は長文です!あと、やっと目次の付け方がわかりました👏👏

これまで私が見てきた中でベストムービーと言っても過言ではないくらい大好きな映画があります。
それが、『パプリカ』という作品なのですが、今回はその映画の原作についての考察ー特にラストについてーを述べようと思います。

今敏という、46歳で亡くなった鬼才監督が生前最期に手掛けた作品が『パプリカ』です。
そして、今回取り上げる原作は筒井康隆さんによって書かれました。

私はアニメ映画のみしか見たことがなかったのですが、つい先日原作を読了したので考察を書こうと思い至りました。

あらすじ

夢のモニタリングや、実際に夢に介入することによって精神疾患を治療するPT(サイコセラピー)技術が発達している近未来。

精神医学研究所に勤める千葉敦子(ちば あつこ)はノーベル賞最有力と言われる程のPT治療の第一人者だったが、一方で他人の夢に潜入して精神病を治療する夢探偵パプリカという裏の顔があった。

研究所内のポストをめぐって不穏な空気が立ちこめる中、彼女は同じく研究所に勤めるPT機器開発の第一人者時田浩作(ときた こうさく)によって開発された、最新のPT機器「DCミニ」が盗まれたことを知る。
必死の探索の末に盗難の犯人たちを突き止めた敦子は、何とか彼らからDCミニを奪い返そうとする。

上記は以下のサイトより引用しました。

アニメ映画と原作の相違点

映画とは登場人物たちの役職が違ったり、映画で印象的なパレードが原作では登場しません。
これに関する詳しい内容は以下のページを見てみてください。


これ以降は重大なネタバレを含みます。
もし、原作を未読な場合はブラウザバックをされることをお勧めします。

※ちなみに、今回私が使用するのは新潮文庫版です!
筒井康隆『パプリカ』新潮文庫、2020年

夢か現実か

読了後、多くの読者が抱く感想は以下のようなものではないでしょうか。
「果たして、この最後の章は夢なのか現実なのか」

私も例に漏れず、悶々としました。
そこで、乾副理事との最後の戦闘から「ラジオ・クラブ」での玖珂の微笑みまでを整理してみました。
その結果、わかったことは2点あります。
陣内以外は現実には既にいないということ。
②ラストは陣内の見ている夢であるということです。

この前編では、①についてのみ扱います。
では、早速考察を述べていきます。

①について

理由:陣内だけが途中から戦線を離脱しているため。

乾の攻撃により阿鼻叫喚と化したスウェーデンのノーベル賞受賞会場から、受賞者として参列していたパプリカと時田は粉川に危ないところを救われ、能勢の夢(お好み焼き屋)に逃げ込みます。

この時点で能勢の夢にいるのはパプリカ、時田、能勢、陣内、玖珂です。
粉川はスウェーデンの会場でグリフォンを撃って以来、「ラジオ・クラブ」でパプリカたちと会合するまで登場しません。

その後、能勢の夢に乾の憎悪が流れ込んできたため、モロー博士の島へとパプリカたちは移ります。

この時点で島にいるのはパプリカ、時田、能勢、陣内です。
玖珂は「夢の力で、なんとか時間を開会前に戻しますよ」(p.464)という意味深な言葉を吐いたのち、モロー博士の島に移った時点で消えてしまいます。

なぜか玖珂のみがいない。(p.465)

そして、乾との攻防の末その島から乾の夢である大聖堂に場面転換した時、特に説明もないまま陣内はおらず、代わりに島寅太郎が加わっています。

この場に入れなかったのか、締め出されたのか、陣内はいなくなり、かわりに島寅太郎が加わっていた。(p.466)

この時点で大聖堂にいるのはパプリカ、時田、能勢、島です。

しかし、この後すぐに起こる大聖堂から虎竹旅館への場面転換の際、島と共に時田はパプリカと逸れます(つまり、この時点では虎竹旅館にはパプリカと能勢がいます)。
パプリカはこれを「それぞれの夢に戻ったのだ」(p.466)と推測しています。
時田がこの後にどこかにいるとわかるのは乾が発狂した最終決戦の際です。

「発狂したぞ」時田浩作の声がどこかで叫んでいた。(p.469)


虎竹旅館での戦闘も虚しく、すぐに乾のホームである大聖堂に引き摺り込まれます。
この時点で大聖堂(再)にはパプリカしかいません(乾を除けば小山内もいますが)。

パプリカはひとりだ。(p.467)

パプリカにステンドグラスの破片が襲いかかってきた際に、能勢、時田、陣内、玖珂が彼女を助けようと努力していますが、これは乾の夢へ干渉を試みているということでしょう。
つまり、パプリカと同じ夢の中にはいないが、その夢は「ビニールの膜」(p.468)のようなものを隔てて男性陣も見ているということです。

そして、やっと最終場面。
乾が発狂した際、それぞれがそれぞれの夢へと帰って行きます。
しかし、玖珂だけが自分の夢へと帰っていきません。
彼は夢の力を行使して有言実行しました。

玖珂はこの瞬間に間合いを測っていた。
自分の持つ夢の力をすべて時の逆行に振り向けたまま待機していたのだ。
(…)
それは成功したが、玖珂にはからだと精神に余力が残らず、彼は意識を失い、混沌の中に落ちた。(p.469)

こうして、玖珂の犠牲により時間は巻き戻り、スウェーデンの会場でノーベル賞の授賞式は恙無く行われるのでした。

まとめ

これまでの経緯をまとめると以下のようになります。

パプリカ→最終決戦までいる
能勢→パプリカを救うため最終決戦に乱入している
乾→能勢によって最終決戦にて発狂させられる
時田→自分の夢から最終決戦を見守っている
島→自分の夢に戻ったまま最終決戦を見ていない?
玖珂→最終決戦後、時間の逆行のため混沌の中に消える
陣内→途中離脱
(小山内→能勢に囚われているため最終決戦の場に居合わせる)


こうみると島と陣内だけ理由もなく最終決戦に関与していません。
しかし、後編で次の理由について触れる予定ですが、パプリカたちの夢の世界である26章に島が登場しているため結局島は現実に戻れていないと私は判断します。
よって、陣内だけ夢から目覚めて現実の世界へ戻ったと考えました。

私の素人考察ですので、不備や異論など多々あると思いますが、前編は以上です。
次回、後編では②について述べていきます。
興味のある方はぜひ読みにきてください😊


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こねこの徒然草
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