宝石箱のような「夏野菜の白梅酢葛和え」を作ってわかること
今回は和えものレシピについてではなく、あるレシピを通して感じたことを書いてみたいと思います。
和えものレシピで大切にしていること
私はいつも和えもののレシピを考えるとき、まず「家庭料理としての和えもの」ということをとても意識しています。和食のプロが作るような和えものではなく、家庭で楽しむことができる和えもの、という意味です。
家庭料理ということは、身近な食材で(私の和えものは野菜がメイン食材)作れて、使う食材や調味料の種類が少ないこと、しかも調理過程が極めてシンプルであること、あとはなるべく他の食材に置き換えることができるものであるということ、などを軸に考えています。
「時短」というよりは「シンプルさ」を重視。しかも作ってくださる方々が細かい分量に頼らずに作れるようになることもコンセプトのひとつ。
「作るのが面倒くさい」と思われないような、そして「和えものって気楽で簡単ね」と思ってもらえるようなシンプルさを大切にしています。
なぜなら、家庭料理というのは、料理以外にもあれこれやることがある中でつくるものであり、そんなに時間も手間もかけられないものだから。そんな中で、主菜でない副菜のひとつである「和えもの」には余計に時間や手間はかけられないと思うから。
私の和えものレシピは「メインとなる食材が季節野菜」というのがほぼ全て。使うお野菜は1種類か2種類がほとんど。たまに3種類があるぐらい。和え衣に関しても、酢味噌和えであれば「お酢とお味噌だけ」とか、そんな感じです。
実際に私のレシピをみてつくってくださった方々からは、「とても簡単なのに、おいしくできました」など、その簡単さ(シンプルさ)も気に入ってくださっているようです。
たまに面倒な和えものを
ところが、たまに自分自身の勉強のために、食材の種類も作業工程もとても多い、少し面倒くさい和えものを作ってみたくなるときがあるのです。
家庭ではとても作る気がしないような、強いて言えば「おもてなし料理」のような和えもの。それを丁寧に丁寧に作るのです。
それは、「簡単なものばかりつくっていては、和えものクリエイターとして成長できないかもしれない」という不安もあるのかもしれませんし、面倒な和えものもつくれますよ!」という自己満足を得たいだけなのかもしれません。
ただ、この手間暇をかけた面倒な和えものをつくると、和えもの和食についてなど新たにわかることや確認できることがあるのは確かなんです。
そんな気分で今回作ってみたのが、「夏野菜の白梅酢葛和え」。
夏野菜の白梅酢葛和え
使った食材は以下の通り。
野菜ごとに下味をつけ、葛和え衣の味付けから和え衣にする方法など(調味料オタクぶりも発揮しながら)自己満足の塊のような方法で作ったので、レシピは公開しないことにしておきます。
いずれにしても、夏野菜にブレンドしたお出汁や自家製白梅酢、その他調味料、葛を和え衣にしたわけです。各野菜の味の含ませ方、食感の残し方、梅酢の酸味の効かせ方や甘味のつけ方などがポイントと言えるかもしれません。特に葛和え衣の食感にはとても気を配りました。
結果的においしかったかどうかですが、とてもおいしく出来たと思います。おもてなし料理としてお出ししたら、きっと喜ばれると思います。
そんな、いつもの何倍も手間暇かけた和えもの(和食のプロの方にしてみたら大したことはないのだと思いますが)を作ってみて感じたことがあるので書いてみます(ようやく本題に入ります)。
この和えものを通してわかったこと
結論から言うと、
和えものを煮物(煮しめや炊き合わせ)のようにつくる必要はない、ということがよくわかりました。
例えば、お正月のお煮しめをつくるとき。ごぼうやらこんにゃくなどアク抜きはするとして、そのあとは全部一緒に煮てしまう、というやり方があります。メリットは時間がかからず、それぞれの食材の旨味をお互いに吸収して、全体的にまとまった味になるのではないでしょうか。
それに対して、それぞれの食材ごとにお鍋で煮て味付けする方法もあり、より丁寧で見た目も美しく、食材の味を生かした作り方と言えます。
プロの料理人の方々は、煮物においても、それぞれの素材を別々に炊いて、炊いたものをひとつの器に盛り付ける「炊き合わせ」という方法を用いることが多いのだと思います。
私も「夏野菜の炊き合わせ」というものをこの方法でつくることがたま〜にあります。
今回の和えものも夏野菜7種類に対して、それぞれ煮たわけではありませんが、煮るものに関しては煮て、煮る必要のない素材に関してはそれぞれ味を含ませました。葛和え衣の中で、それぞれの素材に「それぞれに合う、異なる味」が含まれている方がより美味しいだろうと思ったからです。
ところが、とても美味しく出来たのですが、そのかなりの手間をかけた部分はさほど必要でないことに気づきました。
炊き合わせをいただくときには、食べやすい大きさに切られた野菜をひとつずついただくので、それぞれの味つけを噛み締めることになります。
これに葛あんをかけた餡かけであっても同じことが言えます。
煮物の一種である「含め煮」は汁と一緒に具材をいただきますが、葛あんかけも同じですね。
例えば海老、里芋などの餡かけであれば、葛あんと一緒にいただいたり、具材だけをいただいたり。
それに対し、和えものの場合は和え衣(今回は葛和え衣)と具材を基本的に和えてしまうので、個々の味というよりは総合的な味を味わうものだと言えます。
今回は7種類もの野菜を入れましたが、普通は1種から3種程度ですし、今回はたまたま茗荷が大きいですが、普通はもっと小さく切って合わせます。つまり、枝豆とパプリカを一緒に食べたり、
茗荷と茄子を一緒にいただくわけです。
したがって素材ひとつひとつに合わせた味付けをする必要はないのです。
つまり、
前者は個々を味わう部分が強く、後者はまとまり感を味わう、
といった感じでしょうか。
したがって、これから同じものを作るときは、こんなに手間をかけることなく、同じ味付けにして、何なら下味をお醤油だけ、とかにして作ってみたいと思います。きっとかかる時間が3分の1程度に短縮されることでしょう。
今回の和えものを通して、和えものにおいて、いえ、和食において「丁寧につくることはとても大切だけれど、手間暇をたくさんかけたり、多くの食材や調味料を使えば良いわけではない」ということも改めて感じました。
少なくとも家庭の和食では、そういったことが言えると思います。
頭でわかっていても、試してわかることが大切だと感じた次第です。
と言いつつ、これからもたまに面倒な和えものは作ってしまう私が見えますが。笑
また近いうちにもっとシンプルに夏野菜の葛和えをまた作ってみたいと思います。
長くなりましたが、最後までお付き合いくださり、ありがとうございます。
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