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「好きな事・やりたいことだけで仕事していきたい」という相談への返答を「孫子の兵法」を活用して考えてみる

相談を受けた時、自分の考えが入っていない・自分が納得していない回答をする際の気持ち悪さを解消するため、「孫子の兵法」を参考に回答を導き出したら、とても良かったよ、という記事です。
途中から他の人へのアドバイスためではなく、完全に自分向けのアドバイスになっている自己満足記事ですがご参考になる人がいれば幸いです。


今回の記事の背景

学生や社会人2〜3年目から同年代(40代)、お取引先の人など色々と仕事の相談を受けることがある。

中でも定期的に相談をうけるのが「好きなことを仕事としてやっていきたいが、どうやってやっていけばよいか?」「やりたいことがあるが、未経験でもその業界に転職(起業)するのはどう思うか?」という内容のものだ。
※かなりざっくり書いています

やりたいことがある人に対しては「やってみる・行動してみる」は向き不向きや得意不得意なども分かるし、やってみて初めて分かることの量が圧倒的に多いであろうというのもあり、「まずはやってみるのがいい」と基本的には思っている。

野球選手になりたいのであれば、いくら野球の理論書やルールブックを読んでもヒットを打てるようにはならないが、まずはバットを振る、打席に立つ経験をし、そこから学んでいくほうが自分の現在のレベル感を知ることができ、また選手としての能力が高まると思う。

ただ、その人の人生をかけた選択に対して、僕みたいなものが「いいね!やってみなよ!応援するよ!」と気軽に言ったり、「そんなの自己責任。自分で決めて。」と突き放す、というのは簡単だけど、そこに自分の思考がない返答の場合、あまりに無責任で納得感が薄く、気持ち悪さが多いのも事実。

最近立て続けに同様の質問を受けたため、これは自分の中で納得感の高い、自分なりの考えを持たないとなぁ、それを元に相手がどう判断するかは相手に委ねる、というようにしたいと思い考えていると、ふと本棚にあった「こども孫子の兵法 」という本が目に止まった。

この本は有名な「孫子の兵法」の内容について子供向けに説明するために作られた本で、とにかくとてもわかり易い。大人が読んでも全く問題ない。というか、むしろ初めて孫子の兵法に触れる大人の入門書にいいのではないかとすら思う。

『孫子』(そんし)は、紀元前500年ごろの中国春秋時代の軍事思想家孫武の作とされる兵法書。武経七書の一つ。古今東西の軍事理論書のうち、最も著名なものの一つである。紀元前5世紀中頃から紀元前4世紀中頃あたりに成立したと推定されている。『孫子』以前は、戦争の勝敗は天運に左右されるという考え方が強かった。孫武は戦争の記録を分析・研究し、勝敗は運ではなく人為によることを知り、勝利を得るための指針を理論化して、本書で後世に残そうとした。
孫子 (書物) - Wikipedia

中国の春秋戦国時代といえば、人気漫画「キングダム」の舞台になっている時代で、大小様々な国が数百年に渡って戦争を繰り返し、史上初めて中国を統一した国「秦」ができるまでの時代だ。

そんな想像を絶する戦乱の時代に生まれた戦争に勝つため(生き残っていくため)の戦略・戦術本だ。数千年の時を経ても読みつがれてきていることから、時代や状況に左右されない本質的な事が書かれているのだろう、という事は想像が付く。

冒頭の質問なども、言ってみれば現代の生き方・生存方法についての質問でもある。もしかしたら、孫子の兵法に何かしらのヒントがあるのではないかと思い本書を参考にしながらどういった回答になるかを試してみた。

孫子の兵法にたくさんある戦略・戦術の中から該当しそうなものをいくつかピックアップした。

1.守りを固める

孫子の兵法では「まず何をするべきか?」について書かれている。その内容は以下の通り。

昔の善く戦う者は、先ず勝つべからざるを為して、以て敵の勝つべきを待つ。
勝つべからざるは己に在るも、勝つべきは敵にあり。

これは、「まずは相手のことより自分のこと。負けないための準備をしっかりしよう。」という意味とのこと。

「勝つため」に「負けない」ための準備。

戦争時であれば、「死ぬ」とか「国が滅びる」が負けという定義になるであろうから「食料の確保」「休憩場所の確保」「基地局の防衛」「本陣との連絡網の確保」等が該当しそうだ。ここは状況や目的などによって様々な定義ができそうだ。

会社経営だと「資金が無くなる」になるであろうから、「支出の見直し」「活動資金の事前の確保」「安定収益の確保」などが該当しそう。

今回の相談において「負ける」というのはどういう事を指すか。それは「好きな事、やりたい事を仕事にできなくなる」という事になるであろうから、そうなってしまう要因として大きいのは以下の2つが該当しそう。

・生活に必要な収入、資金の確保ができない
・好きなこと、やりたい事をする時間の確保ができない

好きな事、やりたい事ですぐに収入にならなくても生活を続けていけるように、始める前に生活ができるお金をまずは確保、もしくは継続して入ってくるようにしようぜ、ということだ。

例えば、昨今の流れであればいきなり転職ではなく「副業」でまずは初めてみるなどが該当するだろうし、今の職場の中で自分のやりたい事を仕事にできるように動くのも一つの手だと思う。

もしくは、貯金や貯蓄や株式など自分の資産がある場合は、例えば1年間は無収入でも生活できる、など必要な期間と思える分の資産を事前に確保し、それから動くのも良いと思う。

とりあえず会社を辞め、生活のために一日中アルバイトが必要になり本来のやりたいことをする時間がない、などは本末転倒だ。

まずはここから取り掛かるべきと言えるかなと思う。

2.情報を集める(自分と相手を知る)

そして次に大切なのは、この「情報を集める」のように思う。孫氏の兵法ではこのように書かれている。

彼れを知りて己を知れば、百選して殆うからず。
彼れを知らずして己を知れば、一勝一敗す。
彼れを知りず己を知らざれば、戦う毎に必ず殆うし。

相手のことも自分のことも知っていれば何回戦っても負ける心配はない。
相手のことを知らないで、自分のことだけ分かっていたら、勝てる可能性は半分くらい。
相手のことも自分のことも知らなければ、必ず負けてしまうよ。

ということのようだ。

ここでの「相手」は「業界」と読み取っても良いでしょうし、「仕事内容」と読み取ってもよいと思う。

どんな業界で、どんなプレイヤーがいて、どんな仕事で、どんな給料体系で成り立っているのか。それらを知ろう、ということだ。

そして、合わせて自分のことも知ろう、と言っている。

これは、自分のスキルレベルや強み・弱みみたいなものが該当するかなと思う。

何よりも大切なのは、ライバルとの力の差や、置かれている状況に対して、自分ができることを正しく理解ておくことが大切。

まさしく。ぐぅの音も出ません。

3.すぐに動く

上記「1」「2」あたりの準備ができ、それでも行きたい!と思ったら、後はもう行動だ。孫子の兵法では以下のように書いている。

先に戦地に処りて敵を待つ者は逸し、
遅れて戦地に処りて戦いに赴く者は労す。

大事な場面では、早めに行動しよう。早ければ楽になるし、遅ければ苦労が多くなってしまう、という意味とのこと。

決めるための準備をし、腹が決まったら何事も即行動。

「後で」がどれほど致命傷になることか。。。

4.地道な努力

いざ行動したら、後はもう地道な努力の積み重ねだ。努力なき成功はない。
僕が知っている、いわゆる成功者と言われている人たちも全員一人の例外もなく、努力家である。

善く戦う者は、其の勢は険にして、其の節は短なり。

これは、地道な努力で、いざという時のために、力をためておこう。
という意味とのこと。

「険」というのは弓をギリギリまで引いてピンと張った状態を指し、「短」とはその力を一気に吐き出すことを指すようだ。

日々の努力で力を蓄え、ここぞという時にその力を一気に出す。それが大きな成果を生む。

努力をしている最中は地味で誰からも見られない時間をすごすが、その努力が無いと、ここぞという時に力を発揮することもできない。

ここまで書いてきてうすうす気づいてはいたが、自分はこれらを全て自分に言い聞かせるように書いてもいる。

5.プレッシャーの中に身を置く

退路を断つ、ではないけれど、とにかくプレッシャーの掛かる場面に身を置くことが大切である、と孫子の兵法では書かれている。

これを亡地に投じて然る後に存し、
これを死地に陥れて然る後に生く。

あえて自分を追い込んで、自分でも予想していなかった大きな力を発揮(獲得)しよう、と言っている。

孫子の兵法が書かれた時代では、兵士が力を最大限に引き出すために、あえて危険な状態において戦わせていたようだ。

今の時代だと「ブラック」「パワハラ」と言われてしまいかねないが、数千年の時を経ても人間の本質はそんなに変わらないであろうから、このような状態に身を置くことは必要なのだろうと思うし、納得感の高い人も多いのではないかと思う。

当人は逃げ出したいだろうし、他のせいにしたいだろうとは思うが、これを経験できるかどうかが今後「好きな事、やりたい事」を仕事にしていくにあたって避けて通れない道だと思われる。

6.逃げるも大切

ここまで、努力だプレッシャーだと書いてきたが、それでもどうにもならない場面が訪れることもあるだろう。其の場合は「逃げよ」と孫子の兵法では書かれている。

少なければ則ち能くこれを逃れ、
若かざれば則ち能くこれを避く。

意味のある「逃げ」だってあるんだよ。敵わないなら、さっさと逃げてしまおう。という意味だ。

どんなに頑張っても、それで死んでしまっては元も子もない。
「1」にあるように、「負けない」ための仕組みさえあれば一旦逃げても全く問題ない。むしろそれによって、再度体制を整える、戦略・戦術を変える、体調を整えるといった次の戦いのための準備ができる。

「勝てば官軍」という言葉があるように、全ての戦いで勝たないとならない、ということではない。負けないようにし、どこかで勝てばいいのだ。

違う会社へ転職でもいいし、お客さんを選ぶようにしてもいい。負ける戦いはする必要がない。

7.有利・得意かの判断

ある程度、経験ができてきたら、そろそろその仕事についても少し客観的に見たり評価ができるようになってくるだろう。

その際に大事なのはこれだと思う。

利に合えば則ち動き、
利に合わざれば則ち止まる。

これは、自分が好きか嫌いかだけではなく、有利か不利か、得意か不得意かでも考え判断しよう、とうことだ。

自分にとって、その仕事は「好きな事、やりたい事」という基準だけではなく、現実的に周りに比べて得意と言える部分があるかどうか、それ自体が自分の夢を実現するために有利かどうかを考える必要がある。

これは、分業された業界では、その一つ一つを見ても良いであろうし、業界全体が今後も伸びる可能性があるかどうかで見るのもいいと思う。

また、所属している会社に勤務し続けること自体が転職や独立を有利にする、などもあると思う。

「好き・嫌い」「やりたい・やりたくない」だけではなく、「有利・不利」「得意・不得意」という基準でも見てみると良い。

8.まとめ

随分長くなってしまった。以下に簡単にまとめる。

1.続けるための基盤(収入・資本・時間)を確保しよう
2.情報を厚め、自分と相手を知る
3.やると決めたらすぐに動こう
4.地道な努力を怠るな
5.プレッシャーの中に身を置く
6.勝てない戦はせず、負けそうな時は逃げる
7.有利か得意かの判断軸を持とう

途中でも書いたが、相談を受けたときのアドバイスのための参考として「孫子の兵法」を読み始めたが、まさしく自分に対してとても大切な事を学ぶことになった。

会社経営などに活かしている人が多いと聞くが、それ以外のどんな場面にも役に立てる指針が書かれているように思う。

何かに迷った時や決めないとならない時にパラパラとめくってみるだけでもオススメと感じました。

最後に僕が参考にした本を以下に改めて置いておきます。


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