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出切らない欠伸に憂鬱さを感じながら

 腹を空かせて夜の道を下る。
 財布を忘れていつもの立ち食い蕎麦を食べれなかった僕は、肩を沈ませて家を目指す。
 宙を見上げて、星だか星に似た飛行機だかを見つけると、なんだか欠伸が出て⋯⋯こないかもしれない。
 口は開くのに。
 欠伸は大きな呼吸だと言われているが、空気の出入りを全く感じない。
 不完全燃焼な感じを喉元に溜めながら、実家のドアをガシャり。
 カップ麺片手に自室へ籠ると、窓の外から声が聞こえてくる。
「オニーサン、そんなに落ち込んでドウシタノ?」
 窓を開けると、視界に入ったガキンチョに言葉を返す。
「そんなに落ち込んでいるように見えるかい」
「私が見えてるってことはそういうコトだよ」
 理屈になっていない理屈を挙げられるが、そうかと納得してしまう。
「ところで、君はなんで僕の前に現れたのかな」
「アタシは疲れてる人を癒して回るのが仕事なの。良かったわねアタシに目を付けられて」
「そうかい。じゃあ疲れているから放っておいてくれないかい」
「ふぇ?アタシなら、どんなにイイコトでもタノシイコトでもしてあげるけど」
 目の前のガキは腰をくねくねと動かす。
「僕はお腹が空いたんだ。悪いね」
「?????」
 僕は窓をパシャりと閉めると、窓の外の怒鳴り声を無視してカップ麺を啜る。
 嗚呼、長話をしたせいで麺が伸びてしまった。
 麺を啜り終えると、何だか眠くなってきて、ベッドに横になった。

 変わらない夜だ。

 ふあ〜あ。

 あ、欠伸でた。

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