「この遺言書を本人が作成できたとは思えない・・・②」
前回に引き続き、遺言の「有効性」についてお話をします。
今回はよくご相談をいただくケースについて、いくつかお話します。
遺言者が作成当時「認知症」だった場合
ご高齢になってから、相続のことを考えて遺言を作成される方が多いかと考えます。
この遺言作成時に、遺言者が「認知症」を患っていた場合でも遺言は有効なのでしょうか。
大事になってくるのは、その当時、遺言者の患っていた認知症の進行度合いがどの程度のもので、それが遺言者の意思・判断にどのような影響を与えていたのかという点です。
そのため「当時、認知症だったから遺言は全部無効だ」というような単純化はできないと考えられます。
この場合には、当時の医療記録、介護の記録など客観的な記録を取り寄せ、確認をしていく必要があります。特に、介護認定を受けている場合には、認定調査の際に作成された資料などの開示請求を行い、内容を精査することも大切です。
そして、遺言が作成された経緯、内容の複雑性などを考慮して、個別に判断する必要があります。
遺言者の意思が反映されていないと感じる場合
また、遺言を作成された方が、生前に親族に伝えていた内容と遺言の内容が全然異なるというケースもあります。
この場合、遺言者が誰かに騙されたり、脅されて遺言を書かされたのではないか、と疑われる方もいらっしゃいます。
たしかに遺言の内容のうち、財産的な行為に関するものは「詐欺・強迫」による取り消しの対象になるとされています(民法96条)。
この点を証明する必要があるところ、それを根拠づける資料を集めることがなかなか困難であるとも言えます。
また、これは一般論になりますが、ご高齢者の方の中には身近な親族に過度に迎合的になってしまう方もいらっしゃいます。
そのため、このようなケースであっても、上記と同じように遺言能力の有無や作成経緯などから判断をする必要があると考えます。
今回のまとめ
認知症を患う方は増える一方で、相続対策については後手に回ってしまうという方も多くいらっしゃいます。
それに伴い、認知症もしくはそれが疑われる段階から相続対策を始め、遺言を作成されるという方も一定数いらっしゃいます。
この場合、本当に遺言を作成された方が理解をしていたのかということで疑いが生じてしまうと、遺言の執行の時点でトラブルが生じてしまうことがあり、手続きも進みません。
そのため遺言の有効性について疑いがある場合には、弁護士にご相談をいただき対応について検討することをお勧めします。
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