センスは5%を読み丸【読書感想文】
恐らく読書感想文を書くタイプの本ではない本、「センスは5% クリエイターをサポートするための45の技術」を読んだ。
バーグハンバーグバーグ(オモコロ運営)の長島さんが本を出すらしいと知り、内容もよく知らないまま購入した。
クレカ支払いが滞り再注文もミスして2つ買い届き「センスは10%」になった。返品する方が気怠いので、生まれて初めて2冊買った本がこれになっている。100%中5%より200%中10%の方がなんかしんどそうっすね。
いやさ、読書感想文向けの本じゃないけどさ、noteも白紙に「noteで読書感想文を書いてみませんか?」って薄地で書いてあるし、オモコロウォッチで書評が欲しいって言ってたから……。
まず第一に勘違いしてたのが「クリエイターサポーター向け」とか「クリエイター的な人間の実践例つき取扱説明書」とかみたいな本だったってことだ。
購入時点では「クリエイター(になりたい人)向け」だと思って買ったけど、そこらへんの解説はけんすうさんとの対談がわかりやすくて良かった。
「コンテンツ関係者(になりたい人)向け」だ。
「創る」というメインに見える部分に対して、その20倍くらいは別のことをやってますよ、とわかりやすく説明している。周囲の納得や感心の獲得を目指している部分も含めて「うちのやり方はこうです」と声明を出しているような文章だと感じた。
疲れやすい特性のエンタメカルチャーの人らとの、長島さん自身を含めた付き合い方の話というか。合理的に思えるサポートの方法を自らの身をもって体験し練って編んで徹底しようとしている、心得た人の「教義」みたいな感じがした。
社長業やスタートアップ、これから上に立ちたい人の心得として(特にインターネット関連の人なら)読んでくれてたら間違いなく社員が嬉しい本ではありそう。
とにかく「(クリエイターにおける)怒りやコミュニケーションの影響」への理解があり、後半は伝達や具体的な方法に触れている。全然クリエイターじゃなくても通用する「こだわりの尊重」みたいな話でもあると思う。
当たり前のことから書いてくれているし、めちゃめちゃ真面目な文章だ。
良く言えば安心する説明口調で、悪く言えばちょっとだけ言い訳がましい。言い訳がましい人って怒られたくないからそうなるので、こういうのは表裏一体なのだろう。
ハウツー的な本を書くとその後の会社自体の進展や案件と本とが相互に影響するから、本当にかなり思い切ったんだろうな~、なんて想像しちゃう。
「好きを仕事に」と簡単には言うが、それが「仕事」という時点でやりたいことに付随する面倒事(個人では処理が難しい苦手分野など)がその何十倍も発生するのは、面倒見のいい大人が揃って口にすることだ。
ただ、発生した部分の処理のことをどうやりきるのか、みたいなのはわざわざ口にしないことが多い。そういう意味で、知ってる情報はありつつも大いに助かる本だった。
あとシンプルにバーグ内部の優し気な告発的なエピソードも含めて楽しく読めた。この会社を知らない人まで波及して読まれる本かと言われれば、そこまではちょっと届かない感じ。推される「箱」としてのオモコロが強くなるほど評価される本ッスよね~、みたいに思う。
「こういう”甘い”とも捉えられる規則や会社がインターネット上で支持を集めつつあります」って触れ込みなら、興味を持つ人もいそう。
「創作」に関する価値や期待が今から仕事をできるようになる人達(2000年代以降の成人)の中で上がっているのも肌感覚として確かで、それもインターネットっていう便利すぎる代物の副産物だと思う。2010年代の子供も、2020年代の子供も、社会が便利になればなるだけ考え方も多様かつ変な子は増えると思うのだ。知らんけど。
この本はそういう子らのサポートの足掛かり的な教えになれると思う。
だらしないだけのいち個人として読んでて良かったのは「狂気性を出す」「健康が一番」みたいなやりやすくするためのヒントだったり、体験談や失敗事例を見て学ぶ所作だったり。一言Tips的な部分だった。
読んでて悪かった部分を別視点でわざわざ挙げるなら、文字がデカく余白多めでわかりやすさに特化していて、より深く解釈して納得したい、勉強好きな人には向かない本だってことくらい。
本って読むのキツいな~~~の人も割と読める雑誌のコラム的なつくりで、僕もそれこそ「なんかやさしいな」という印象だった。個人的にはそこまで悪いことじゃないと思う。
そもそも本当に心底本を読むのが好きな人がコレに興味を持ち、手に取って買うか?って言われると首ひねっちゃうし、これで全てわかる!!!と思い込んでる人が買ったら拍子抜けするんだろうな、とも思う。
とにかく入門書だけど、こういう珍しい門をノックできるだけいいことだと思う。
信頼する上司の本棚にあったら「オイオイオイオイ!!!嬉しすぎか!?!?」とはなる。
書き方はやさしいけど、完全に会社と仕事の話だ。
実際のバーグ社員の動きをそれなりに知っている納得感込みで面白かったから、思想が似ていてオモコロが好きならオススメできる。これからネット世代の上に立つけど、すぐ折れちゃってよくわかんないなぁ……って真剣に悩む上司世代もオススメできる気がする。僕は前者だから楽しく読んだけど、これを「なんか売れてるな」で手に取った人が満足するかは微妙!
でも「めっちゃ考えてくれてる人の嬉しいお喋り」みたいな本だから、総合的にすごい満足した。
こなまるでした。