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やさしさを捨てられたなら 23/11/26

疲れた~~~~。
明らかにいい日じゃなかった。

8時に起きて、いつも通り自動車学校に向かった。
模擬テストで時間を潰したあと、一回目の運転講習。

4回ほどお世話になっていた口の悪いだけで面倒見のいい講師は、しばらく休みを取るらしい。
朝の時点で知らない講師にあたることがほぼ確定していて、そこそこ不安になっていた。

ちなみに不安は的中した。
感覚での語りが多く、指摘以外で教えてくれないじいさん講師が担当になった。
おそらくギリ現役くらいの年齢で、サングラスに変えられるタイプのメガネをかけている。

車に乗るとサングラス姿に変貌して当たりが強くなるのが、そういうキャラクター作りのようで少しウキウキした。
いや、ウキウキしようとした。
本当に状況を楽しんでいたというよりは、目の前の怒られから目を逸らすために楽しそうなことを考えていた。

常に鉄の塊に乗っている不安が強い。故にうわのそらでスピードを出すようなことは無い。
むしろストレスから気を逸らそうとしてノロノロと動いたまま、確認や合図が遅れたことがかなりあった。
ストレスを感じさえしなければもっと上手くやれる気もする。

肩の力を抜けと1時間に15回ほど言われた。
理解はしているけど、知らない食堂でご飯を食べているだけで肩の力が入る人間に言われましても。
慣れの問題でしかないと感じてるから、しばらく言わないでほしい。

人の命に関わる仕事とはいえ、既に怯えている人間をさらに怯えさせる必要はないんじゃないか。ヘラヘラハッキリ返事をしつつも怒り心頭だった。

2回目で「合わない講師が確実にいると思うよ」と見抜いた姉御肌講師はその後一回もあたっておらず、なんか占い師みたいだったな、なんて思った。

少し走りを見た後、「スピードを出すのが怖いか?」と聞かれ迷わず「正直まだ怖いです」と答えた。
人によっては「ブレーキすればいいんだからそんなに怖くないです」までの自信があってもおかしくない。数えてみると既に12時限も講習を受けているらしいし。

問いの返答次第では講習内容が変わっていたかもしれないが、速度を出す練習になった。邪魔な恐れを捨てるための。

直進で速度を出してカーブ前で減速、それの繰り返し。
交差点に差し掛かっても「お前はそれ以前の問題だから合図もなしで一回加減速の調整を覚えな」と合図と確認はさせられなかった。
えぇ~。

正直めっちゃイヤだった。
感覚を覚えて慣れてから思い通りに動かせるようになったとして、ここで確認と合図の癖付けを怠ると後に響くと思ったからだ。
このルートに分岐するくらいなら「怖くないですけど?ハイ加速ブーン減速ブイーン」ってやってみせればよかった。怖いけど。

講師によって教え方が違うのはどんな塾や学校でも同じだけど、車校は教える内容が一定だ。だからこそ教え方のクセが強い時にわかりやすい。
開始10分の時点で、もうハズレだなと思っていた。

こういう諦めはメンタル面において肝心そうで、休憩室で「配車券は講師ガチャ」とか「この人は当たり、この人はハズレ」って話を聞くと安心する。

教える側からしても、価値をつけられてしまうことへの諦めはあるとは思う。
ただ相手も人間だし、こっちも性格上「教えていただいてるな」という気持ちが捨てきれない。
運転技術を上げるだけなら、多分そんな優しい感情は要らないんだと思う。

結果としてメンタルを痛める。
仕事を辞める時の社長よりは強い言葉に感じなかったから、枕を濡らすほどないけど。言われたこと自体は納得しているし。

講習が終わり、スケジュール通りならやっと帰れると思った矢先に講習時間を増やしてみたらどうだと提案された。
あくまでも強制はしないらしい。不安なら、だと。いや不安は不安よ。

そういうスケジュール調整って講師が受け付けに伝えてくれるって聞いたし、実際に一回スケジュール変更してくれた講師もいたんだけどな。
アレ~?


学校発のスクールバスを逃すのを承知でフロントに向かうと、上層部に確認がいるので1時間後にまた来てもらってもいいですか?と申し訳なさそうに伝えられた。
ほら~!絶対生徒から変更したいって伝えないほうがいいだろ。

既に仮免許への学科講習は満足できるほど終わっていて、それでも一応模擬テストや昼食を取って暇を潰した。

こういう時に、真面目なのが仇になる。従わなくていい人間にとりあえず従ってしまう。

1時間後に再来すると、今度は教習原簿を預かるのでもう1時間アナウンスをお待ちいただいていいですか?と言われた。2時間+αで、2時間に1本のバスを2本逃すことになる。

1日2時間までの運転教習のなかで慣れるために、心が折れていくのも知りながら承諾した。

暇な時間もハズレ講師のデバフがずっと続いてるような、かなりネガティブな気持ちになった。従わなければこんなにしんどくなかったのでは?と。

おそらく受付で「生徒都合か指導都合か判定」を終えた末に「指導進捗の確認」をしている。
講師としても1時間ごとにしか確認が取れず、結果として合計2時間かかったのだろう。

1時間後に「運転講習は確かに受けた方がよさそうと判断されたんですが、一旦講師のスケジュールが満杯なんですよね……」と述べられた。

2時間待ったのにですか?

続けて「ただ生徒さんさえよければ、キャンセル待ちに名前書いていただいて、アナウンスを待っていただければ可能性はあります」「確実に講習に入れるとは言い切れません」と言われた。

え、昼の12時に帰れそうだったのに2時間待たされた挙句19時まで待機か?もうその頃には20時発の最終バスしかなくね?……と思考が巡る。
それに不安は不安だけど別にどうしても受けたいと思って待ってないし、それなら講師側が強制しないとおかしくね??と。

受付の人に愚痴を垂れても解決しないし、2時間も待っていて既に「どうしても受けたい生徒のてい」にはなっていたし。
10秒ほど無言で苦悶の思考をしたあと、ペンを取りガラガラのキャンセル待ちリストと時間枠を埋めた。

アナウンスがかかったのは2時間後。急いで配車券を受け取った。

2回目の運転講習もボロボロだった。
講師は30代くらいの気が強そうな女の人で、状態を見極めるような無言が多かった。
教え方は上手いけど、わかって当然みたいな教え方だ。
無言で髪の毛を触っていたり頬杖をついたりのストレス仕草が目について、正直しんどかった。
これならミス直後に強く指摘されたほうが幾らかマシだ。ネチネチというのが近い。

既に12時間ほどの教習をしていたから、見極めようとするのも講師として当然と言えば当然だろう。講習時間を増やされているから本来の見極めではないけど。

S字カーブでゆっくりパニックになった時も無言で脱輪まっしぐらだ。

要所で大事なことは教えてくれるけど、自分に合うタイプじゃなかった。
口が悪くてもいっぱい喋る人がいい。1回目のハズレ講師のほうが気持ちマシかも。

なによりこの日1回目の運転講習と計4時間の待機でメンタルが終わり散らかしていた。

集中と冷静さが必要な場面において、怒りと悲しみが付きまとっていいはずがない。
……んなこたこっちもわかってんだよ。3秒前に進路変更の合図をするとして、怒りは6秒待たないと消えねんだわ、わかるか?

終わってから「ほとんど毎回合図と確認が遅すぎるから気を付けてね」と言われた。
いや朝の講習で合図と確認を慣れさせなかったからでは???と思っても、別の人間だ。

終わってからは「頑張ってください、応援してますよ」と声を掛けられた。

全ての講師に共通して車から降りると優しく声掛けをしてくれるけど、接し方で統一されているのは唯一そこだけかもしれない。
ここまで気が落ちると優しさも素直に受け取れられなくなる。
マニュアル対応がよォ~!


帰ってからは宿舎に新しく入った人や既に仮免を取った同年代の人らと会話を交わしながら、食事を済ませた。

新しく入った人はえらく暴力的で典型的なスポーツ人間で、2日目にして「前のクリープ現象だけで進むノロノロ野郎のせいで直進の加速ができなかった、一番気持ちいいところが邪魔されてキレそうだった、車から出てきてドレッドヘアー野郎でさァ」と話していた。

初対面2日目の食事中に「飯の量多……あウンコ行きたくなってきた!あ~ごめん食事中に!マジで行ってくる!」「にしてもさっき話したドレッドヘアーのやつムカついたわ、見た目だけイキんなよ日本人には似合わねーし殺そうかな、いや冗談」「横からも関係ないこと話しかけてくるし、ホントイライラした」「スピードなんて最悪急ブレーキで止めりゃいいのに」と自分の語りが強いし多い。

内容はそういうユーモアとして見て直接不快にはならなかったけど、距離の詰め方が合わない人間は普通に嫌いだ。
スポーツ人間によくある口八丁で話はオチまで作れているけど、内容は関係なくそれで盛り上がる状況を作るヤツも嫌い。
シンプルにコイツとは飯食いたくないと思った。

実は待機時間中にぼんやり教習コースを眺めていただけで、その人が乗っている教習車を発見していた。
自分よりはるかに運転として上手で、既にさまになっている。多分まだ3限目くらいだったか。

同じ年齢で大卒内定を貰いつつ、元サッカー部でキャバクラのボーイとバーテンダーのバイトをしているらしい。もうコテコテじゃん。

同席した人らも、口が悪いことに気付いた時点で笑いながら少し引いている雰囲気があった。


そのまま、食後にこれを書いている。

このスポーツ人間くらいには、怒りに素直でいいのかもな。

不安と自信のバランスというか、譲る気持ちと暴力性のバランスというか。
スピードを飛ばす場面で飛ばせないとむしろ事故が近づくのは学科講習で理解している。
徐行が必要ない場面では徐行しない方がむしろ正しい。

便利な世界は、優しさではできてない。暴力性でできている。
排気ガスも高速移動鉄塊も、電気も水も食事も車道も、何かを失うことで得られている。

あと、スポーツ人間のほうが体を動かすのが上手くてかつ暴力性が高い。

中学生の頃にソフトテニス部の3年生が「スマッシュのコツだ?嫌いなヤツの顔想像してぶっ叩くンだよ」って言っていた時点で、ああ違う人種だわ無理だな~と感じていた。
僕の中のスポーツの記憶は、ほとんどそこで止まっている。

今日書いた日記は、思いっきり怒りの感情のままだ。
なにクソ、と思う力を努力に回すことができれば上手くいく気がしている。
最悪急ブレーキで止めりゃいいんだよ。横にブレーキ踏める人間もいるし。

やさしさを捨てられたなら、運転は上手くなるだろうか。
ユーミンも「やさしさに包まれたなら」で「目にうつる全てのことはメッセージ」って言ってたな。


ということで明日は免許合宿7日目だ。
大きく息を吐き、大きな愚痴を吐き、それでも別に折れてはいない。

頑張ってください、応援してますよ。

こなまるでした。

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粉奈丸
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