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愛しのホタルのヒカリ2020

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私の夏はホタルが光る頃に始まる。
今年は梅雨が明けるのが遅く、楽しいホタル月間は、つい先日終わった。

普段の夏なら、ホタルが終わると花火へと好きな被写体がシフトしていくのでホタルの余韻もさほど長くは続かないが、今年は新型コロナの影響で花火大会はどこも中止になり、私にとっては夏が半分終わったに等しい…(笑)
なのでじっくり今年のホタルを振り返ることにした。

さて、私の住む中国地方は自然に恵まれている。人口が少ない過疎地域ゆえ、いわゆる田舎の風景は多く残っている。それでも「昔はホタルがよく光ってたけど今はあまり見ないね」と聞くようになった。農薬や外灯、車のライトなどの近代化による環境の変化がホタルを棲みづらくさせているのだろう。実際ホタルを撮影しに、一応市街地に住む私は、いくつかの光るポイントまで遠征するのである。

まずはゲンジボタルから

SNS上で「ホタルを見てきました~」という投稿がちらちら上がってくるのが5月の半ば頃だ。九州や四国はやはり光り始めが早い。私の住むあたりでは5月では平地でもまだまだホタル光ってるの情報はない。「もう間もなく一年で一番夜撮影に燃える季節が始まるな」とわくわくしながら"その時"を待つのである。

毎年ゲンジボタルが乱舞するあそこへそろそろ行ってみようと、写友のS氏を誘ったのが6月2日。・・・が、やはりまだ早かったようだ。数匹飛ぶのは確認できたが、写真が撮れるまでには至らない。そしてその場所を1週間後に再訪して撮影したのがこれ。

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なぜかここに載せた画像はホタルの光(黄色)が強調されていない(オリジナルはサイズは小さくしているが黄色がしっかり出ている)が、ゲンジボタルの光は非常に明るい。前回と比べるといわゆる「乱舞」状態で沢山光っていた。そういうときは通常は「B(バルブ)」モードの1枚撮り(約1分間露光)で十分で、何より私が目指すところは、ただホタルがたくさん飛んでいればいいのではなく、ホタルの動きを極力表現したい、その画像を見ればカメラのシャッターを切りながら見てきたホタルたちが蘇ってくるような画像。
当然ホタルを実際に見たことある方ならわかるだろうが、写真と現実の発光シーンとは見え方が違う。蘇るとはちょっと大げさかもしれないが、この約1分間にホタルが発光しながら移動していた形(光)跡を正確に記録してくれるのは写真ならではである。この時はS氏を誘わず一人で撮影に挑んだ。前回誘って不発に終わってしまったのでもしこの日も光らなかったら申し訳ないという思いと、民家も近くに数軒あって、外灯もある(実はこれはホタルにとってはよくない環境)ので一人でも怖くなかったからだ。が、しかし一時ドキっとする場面もあった。何かが後ろから近づいてくる…あきらかに動物のようだが姿が見えない。とりあえず足元の草をガサガサして音をたてたら、その者は「ギャっ」と声を発して一目散に逃げて行った…。イタチ? キツネ? 小動物だったことには違いはないが…。その正体は後でわかったが、野ウサギだった。私がいることに気づかずに近寄ってしまったのだろう。こっちも怖かったがウサギのほうも相当びっくりしたに違いない。撤収してさあ帰ろうと車のライトを照らした先に、ちょこんと可愛らしい野ウサギが、いわゆるウサギ立ち?!していたのを見たときは、ほっこりした。何にせよクマでなくてよかった。

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そうしていくつかのゲンジボタルが光るポイント(鑑賞する人もいないような場所が多い)を連日通って、ホタルを撮ったり、条件があえば天の川を撮影したりして夜の撮影を楽しむ。この時期なら夜は雨さえ降らなければ毎日でも撮影に出たい衝動にかられるが、それ以外普段は夜撮影はそんなに気乗りはしないのでおとなしく家でじっとして、テレビで海外の連続ドラマを観ている(笑)一言で「ホタルにはまっている」のだろうが、この感情は何なのかうまく説明できない。
光っているかもしれないし、光らないかもしれない。構えているところに飛んで来てくれるかもしれないし、来ないかもしれない。正直出かけたものの鑑賞にも撮影にも失敗して帰ることも少なくない。それでもまたリベンジしたいという思いにかられる。撮影はあくまで結果であって、夜になって光る彼、彼女らの光を確認することが最大の喜び。

ヒメボタルが光り始めた!

6月半ばのこと、写友T氏から電話があった。
私「もしかしてホタルですか~?」T氏「そうそう」
ここでいうホタルというのは、渓流や田んぼで光るゲンジボタルやヘイケボタルとは違う、陸ボタルで知られるヒメボタルのこと。
T氏はヒメボタルの生息地を探す達人だ。数年前にT氏から自宅から比較的近い山の中のとある林でヒメボタルが光っていると教えてもらい、地元の人ですらホタルが光っていることを知らないであろう場所で、一部の写友と写真を撮っているが、その林で今年も光り始めたというのだ。実はこの数日前に私は夜車で調査に行ったのだが、早かったのか林は真っ暗、「シーン」としていてホタルは一匹も飛んでいなかった。その林がある日光り始めたのだ。
このGOサインは何なのか?とても不思議なのである。もちろん気温が上がってきたこと、雨が降っていないこと、月明かりがない(強くない)こと等、何か条件があるのだろう。T氏によると「栗の花びらが落ち始め」が光るGOサインなのだそうだ。確かにその林の道には栗の花が落ちて真っ白になっている。

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この写真が、ここの林で撮ったマイベストになると思う。この林周辺に約1週間通っても、ピークを見極めるのはなかなか難しい。そういう意味でこの写真はきっと飛んでくれるだろうとあたりをつけた場所に初めてカメラを構え、それが的中した写真だ。
ヒメボタルの写真を撮ったことがある人ならわかるだろうが、ヒメボタルの雄は雌を探すためにチカチカと光りながら移動するが、その移動ルートには何らかの規則性があって、他の雄もほぼ同じように林の奥から出てきて別の林へ移動する「道」がある。その「道」の手前にカメラをうまくセットできればより多くの光跡を集めることができる。
この画像は約30秒を1カットとする複数枚の画像を合成したもので、おおよそ40分間の光跡の重ね合わせだ。
もちろん数匹のヒメボタルが数分で移動する様だけを記録する撮り方もある。しかし一般的にゲンジボタルとは異なり、ヒメボタルは個体が小さく光りも弱いので1枚での撮影は非常に難しいといえる。偶然こちらが期待したところに期待した形で飛んでくれて、それを記録できたら、それはそれで満足感の高いものとなる。何故これがマイベストかというと、光跡をたくさん集められたからだけでなく、それこそヒメボタルの生態を象徴するような動きを約40分間集めた結果、画像を集結したから得られたからにほかならない。そして手前から後ろまでしっかりと光跡を集められたという結果が、自分なりに満足しているからだ(これは日によって、あるいはピント位置によって失敗することもある)。今でもこの写真を撮っていたときの状況が、ホタルが常にチカチカしていた夢のような時間が蘇ってくる。

ホタルはさらに標高の高いところへ

ホタルの成虫の命は約1週間といわれている。ヒメボタルはその生態がまだわからないことだらけのようだが、いずれにせよ、飛べない雌に飛べる雄は光りで猛アピールをして選んでもらい、無事交尾ができると、雌は産卵して後世に命を繋ぐと、ホタルたちはその一生を終えるらしい。
当然その行為が成就すると(もしかすると成就せず死んでしまう個体もあるかもしれない)光る林は元通り静まり返る。
時間差で標高の高い別の場所でホタルは光り始めるので、それに合わせて私も移動する。その間はいろんな場所で撮ってみたくて、ほんとうに忙しい。
選べるほど、実は随所で光っているのだ。ただとてもデリケートなヒメボタルの生息地は、彼らの環境を守り、一部の心ないカメラマンや鑑賞者を大量に呼び込ばないよばないよう積極的には教えないというのが暗黙のルールだ。もちろんヒメボタルの鑑賞できる場所を公表している場所もあるが、ライトをつけない等、ホタルを守るお約束がどこも厳しい。
それは当然のことではあるが、私は大勢のカメラマンと場所取り合戦をしたりするのを極力避けたいため、ごく気心の知れた写友と、あまり知られていない場所(または複数人でもシェアできる広い場所)を探して撮影に出かける。私のホタル好きもだいぶ知れ渡ったのが功を奏して?!いろいろ情報も集まるようになり、今年は今まで以上にあちらこちらのヒメボタルと出会うことができた。
今年の一番のお気に入りの写真はこれだろう。標高約500メートルの林。

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やはりここに掲載すると画質が落ちる?!ようだが渓流を挟んだ林を同時に複数のホタルが同じような感じで大きく旋回しているのがわかると思う。これは午後8時頃から光りはじめた数分を切り取ったもの。その後この林は大乱舞状態となっていわゆる絨毯写真も撮れた。でもそれよりもこのわずか数分のこのヒメボタルと上部のゲンジボタルのミックスの1枚は、自己満足でしかないが、本当に気に入っているのである。
梅雨明けが今年は遅かったが、梅雨明けのときまでおおよそ標高900メートルの林までヒメボタルの光る林を確認できた。情報を提供してくれたり、私の「今日どこ行く?」につきあってくれる写友に感謝しつつ、私のホタル月間は無事終了した。幸い危険なことに遭遇することなく、いくつかのカメラ用品を無くした以外は楽しい思い出しかない。そしてまた同じ場所でホタルたちに会える来年の6月を心待ちにしたい。以前よく光っていたのに年々ホタルの数が激減している林もある。きっとホタルには不都合な環境の変化があったのだろう。一言で自然と言ってもとてもデリケートなのだ。命の尊さをホタルを通してかみしめている。写真にしてこれからも残しておこう。

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※NOTEに画像掲載すると、黄色が白っぽくなるのは何故??見るブラウザーによっても色や見え方は違うかもしれませんね。
#ホタル #ヒメボタル #蛍 #firefly #夏 #日本の夏


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